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番町句会(3/11) [俳句]

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職場を出るのが遅れ、締切に間に合わない事態に。不在投句もしていなかったので、俳句人生(?)35年間で初めての「選句のみ参加」となった。
まぁ普通なら、締切に間に合わない時点で参加をあきらめ、帰ってくるわけだけど。

(選句用紙から)

車椅子を押して屋上山笑ふ

季題「山笑ふ」で春。病院とか老人ホームのような場所が想像されるが、そこから遠くない場所に山があって、車いすの人にも、それを押す人にも木々の芽吹きや枝が風で揺れるさまが見えている。大都会のど真ん中でなく、まぢかに山が見えるような郊外とか地方の風景なのだろう。ところで「山眠る」「山装ふ」だったらどうか。これはこれで、だいぶ肌合いの違う詩として成立する。

山門は足場を組みて雪解富士

季題「雪解富士」で夏。これも作者と富士との距離が鑑賞の鍵になる。遠くからだと、富士の雪解けの状況がわからないし、ものすごく近ければ目の前の風景すべてになってしまうわけだから、富士の麓にある町の、そのお寺であろう。足場を組んで改修をするのだけど、その山門のむこうに、雪解けのはじまった富士がおおきく見えている。「足場を組んで」が、いま進行中あるいはこれから進行する一定の時間を示しているのに対して、「雪解富士」は時々刻々変化する富士山の「現在」を切り取っている。

 

祝・100万部! [本と雑誌]

きょうの日経46面から引用

(以下引用)
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「理科系の作文技術」息長く100万部
中央公論新社は28日、物理学者、木下是雄さんの「理科系の作文技術」(中公新書)が発行部数100万部を突破したと明らかにした。1981年9月の初版刊行から、今年3月までの35年間で80回増刷されるロングセラーとなった。
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(以上引用おわり)

単に100万部売れたことでなく、35年かかって100万部読まれた点が快挙ですね。
同時代でこの本に出会ったことは、私のささやかな幸運のひとつかもしれない。この本(手元の控を見ると、1983年6月4日に大学生協で買い求めたことになっている)は、実務で書く文章の屋台骨となってくれた。また蛇足ながら、「実務文は実務文、文藝は文藝」とはっきり分けて考えることができるようになったのも、この本のおかげ。

 


エリック・ホッファー『波止場日記』(田中淳訳、みすず書房、2014) [本と雑誌]

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ホーフスタッターが『アメリカの反知性主義』を書くすこし前、西海岸ではこんな本が書かれていたのですね。描かれている思惟は、疑いもなく知識人のそれなのだけど、ホッファーが自分を単純に知識人の立場におかず、むしろ距離をおいて考えようとするところは、ソローやエマーソンに通じる現場主義的な思考方法を感じる。そのくらい、アメリカにおける知性主義対反知性主義のせめぎあいには難しいものがあるということか。

また、ホッファーのアジア観は、ウィットフォーゲルのOriental Despotismの影響を受けているように思われ、時代を強く感じる。ホッファーがもし今生きていたら、全然違ったアジア観を持っていたのではないかなあ。そうでもないか。省みれば、人為的災厄を自然現象のように表現してしまうという点において、ホッファーの指摘は今も十分に有効なのではないかと。

第95回深夜句会(3/10) [俳句]

あと5回で通算100回!

(選句用紙から)

春雨や電柱の根を黒うせり

沛然と降る夏の雨だったら、電柱の根が濡れているどころではないだろう。春の弱い雨が、一様にではなく、電柱の根元の、舗装道路に近いあたりを黒く濡らしている。誰もが見ている風景なのだけど、それを切り取ってくるかどうかは、眼前のたくさんのものを虚心坦懐に見据えられるかどうかにかかっている。

地虫出づ天然痘の絶えし世に

季題「地虫出づ」で春。「地虫穴を出づ」「地虫出づ」「蟻穴を出づ」「地虫」はいずれも啓蟄の傍題とされる。ちなみに「地虫鳴く」は秋。
虚子に「蛇穴を出て見れば周の天下なり」の句があるが(『五百句』明治31年)、地中で冬眠していた虫や蛇が春になって外に出てきたら、世界は一変していた、という点では共通するものがある。この句の面白いところは、一応根絶されたことになっている天然痘を詠むことで、この地虫に禍々しい役割−もう一度天然痘を運んできた−を与え、ちょっとホラー映画の冒頭のような読み方もできるところではないだろうか。

(句帳から)

いちめんのキャベツ畑に春の雪
春の霧濃し駅員のアナウンス
駅裏の英語学校春寒し

夏潮新年会(2/21) [俳句]

去年は発熱でぶっ倒れて参加できなかったので、久しぶりの参加。

(選句用紙から)

あたゝかや二百号とて遠からず

季題「暖か」で春。百号のお祝いをしながら、8年後に来る二百号をもう射程に収めて、それまでにあんなこと、こんなことをやりたいと考える前向きな、こころがせくような気持ちと、「暖か」という季題―長い冬のあとでやってきた春を歓ぶ気持ち―がよく響き合っている。会場に78人もいたのに、誰もこの句を採らなかったのが不思議。

釣堀の外に釣り人草萌ゆる

釣り堀に釣り人がいるのは当たり前。釣り堀の「外に」釣り人がいるから面白い。この描写から、川とか沼とか掘割の一部を区切って設けられた釣り堀であることもわかる。

(句帳から)

紅梅や三代続く歯科医院

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