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2019・第9回ぐんま100参加の記録②当日編 [ウォーキング]

(①準備編から続く。備忘録を兼ねているので、いつにも増して冗長な点はご勘弁を)

朝からいい天気。やはり暑くなるのか。
天気予報が「夕方はところにより雷雨」と言っているのがいやな感じ。歩行者は、雷雨でも雪でも避けようがないので。

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8:00 前橋市役所前、スタッフのみなさんとぐんまちゃんに出迎えられて受付。風が強くて寒い。安全ピンを使ってゼッケンをTシャツに止めるのが毎度面倒だが、他にいい方法はないものか。

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8:30 開会式。市役所前の広場は出場者でいっぱい。何人いるのだろう。どなたかのご挨拶で「100キロウォークの折返点は50キロではなく、80キロである」とおっしゃっていて、本当にその通りだとうなずく。最初の80キロを歩く大変さと、残り20キロを歩く大変さがほぼ同じだということ。

9:01 かわいいゲートをくぐってスタート。0.5km地点で歩道橋を渡ることもあって、スタート後しばらくは、先導役に従ってゆっくり歩かなければならない。この時点で既に暑く、道中の大変さを予感させる。
前橋から高崎への大きな幹線道路を歩く。事前に想定されていた通り、信号で立ち止まるのが(より正確にいえば、信号を渡る直前で赤に変わってしまって立ち止まるのが)フラストレーションになる。かといって、赤に変わる直前に間に合うように予測しながら歩くのはけっこう難しい。信号待ちのあいだに、PETボトルの柿ピーをかじるのだが、ボトルから柿とピーが均等に出てこない(柿だけ先に出てきてしまう)ことが判明。事前の実験でわかったいたので、口の広いPETボトルを用意したのだけど、それでもうまくいかなかった。

11:09 高崎市役所のエイドポイントでスポーツドリンクをいただいて一気飲み。案の定、腹痛がやってくる。しまったと思ったがもう遅い。

12:28 第1エイド(19.5k)。塩むすびと梅干が美味。だいぶ汗をかいているので、きょうは水分補給も難しくなりそう。気温は30度近くまで上がっているが、湿度がとても低いので、日陰に入りさえすれば涼しい。

13:25 東善町の交差点を南へ。北から南へ向かう歩道には、日陰が全くない。これはつらい。途中の大きな豆腐屋さんが「豆乳ソフトクリーム」みたいなものを商っておられて、心惹かれるものがあるが、自重しておく。古い瓦葺の民家(農家)で、瓦屋根の上にもう一つ小さな瓦屋根が載っているというか、ロフトのようなものが設けられているのは、養蚕が盛んだった時代の名残りであろうか。

15:04 第1チェックポイント(伊勢崎市役所:34.1k)。バナナをいただく。汗を拭って額を冷やせるおしぼりのサービスがとてもありがたい。

15:32 応援団が待機する沿道のカフェに入る。不思議なことに、エアコンの効いた室内に入ったとたんに汗がどっと噴き出る。温かくおいしい紅茶をいただいて、再び出発。いちめんの麦畑の中を歩くのは気持がいい。その麦畑の中を、2両か3両の東武電車が走っていく。この景色は、北関東らしさを満喫できるすばらしいもので、県外からの参加者を募るには、ここでポスター写真を撮れば…などと考える。

16:29 幹線道路を外れ、古い街道に入る。進行方向左側は歩道がなく、右側にはわずかな歩道があるが、この歩道は昔風に、車の出入口が各戸ごとに削ってあるので、細かい凹凸につきあわなければならない。また、首の後ろから西日を受けて歩くのはなかなかにつらい。

18:49 第2エイド(49.3k)。コンビニの駐車場にキッチンカーが停まっていて、楽しみにしていたミニカレーの配給を受ける。食欲が維持できるかな?と危惧していたが、おいしいカレーで、すんなりと食べることができる。クリームパンもいただいて、早々に出発。

19:40 コース上に1か所だけあるスターバックスの前を通過。立ち寄って甘いものを買おうか買うまいかとギリギリまで迷ったが、第2チェックポイントが近いので、効率が悪いと考えて通過する。

19:53 第2チェックポイント(太田市役所:56.5k)。稲荷ずしをいただく、あとで果物もいただこうと考えたが、結局忘れてしまった。マッサージが数分待ちで受けられそうなので、少し考えてから申し込む。これは大正解で、ガチガチに固まっていた足の各所をほぐし、新品同様?に戻してくださった。値千金とはことのことで、本当にありがたい。

後半用のシャツやベスト(保温性重視)に着替える。脱いだシャツは汗びっしょりで、想像以上に水分が失われていた模様。行動食も全部入れ替える。後から考えると、このころから判断力が低下していたようで、後半用にわざわざ持ってきたジェルの包みを開けることすら忘れてしまった(しかも、ゴールするまでそのことに気づかなかった)。結局、54分間滞在して20時47分に出発。

21:12 太田と桐生を結ぶ地方道を北上するのだが、歩道のない箇所がところどころに現れる。これはたいへん怖い。もともとこの「ぐんま100」のコースは、ニューイヤー駅伝と同じコースであることが看板になっていて、地元群馬県の皆さまにとっては重要なポイントなのだろうけど、大型トラックが体のすぐ横を次々に通過していくとなると、心安らかではない。念のため反射材のタスキを掛けているが、まぁ気休め。

22:00 第3エイド(63.2k)。草津湯の花まんじゅうをいただく。ずっと食べ続けてきたドライフルーツや柿ピーがしだいに食べられなくなってきていたので、これはありがたい。

前後を歩く人はまばら。太田市と桐生市の境界の手前だっただろうか、とある一軒家の前で、こどもをだっこしたお父さん、お母さんから「がんばって!」と応援を受ける。遅い時間に真っ暗な中を一人でとぼとぼ歩いているとき、これは大変ありがたく、また心強い。よく晴れて星がきれいな分だけ、気温がどんどん下がっていくのを感じる。半月が西の空低くかかっている。きょうの月齢は6.2。100キロウォーク当日が満月で、かつ、夜中に高い角度で南中してくれると理想なのだけど(←これは参加申込時にまず調べることのひとつで、藪柑子には大きな関心事)。

22:44 深夜の渡良瀬川を右岸から左岸に渡る。桐生市街地のはずれなので、川面や河原の様子はよくわからないが、橋の長さや高さから、大きな川であることはわかる。むろん、渡良瀬川を歩いてこえるのは初めて。

23:48 第3チェックポイント(桐生市役所:72.3k)。スタッフのみなさんの歓迎で元気づけられる。豚汁の補給をいただくべきところだが、寒いさなかにおなかを壊してはいけないと考えて自重。トイレに行こうとして市庁舎の奥まで歩いていって、直前で翻意して戻ってくる。私は何をやっているのか?自分ながら不可解な行動をとっている。

00:25 疲労と眠気で食欲がなく、持参した行動食をこれ以上食べられないので、76.6k地点のローソンに入って温かいお茶とゼリー2つを購入。その場でinゼリー(エネルギーストロング)を飲むが、栄養ドリンク味ってどうしてこんなにまずいのだろう。エネルギーレモンにすればよかった(どうでもいい話)。朝バナナは、歩きながらちびちび吸い込む。

00:55 国道50号線に入る。あとはこの道路を、ひたすら西に向けて歩いていくだけ。とはいえ、ゴールまで23.5キロもある。また、さきほどの太田桐生間の地方道にも増して大型トラックやトレーラーがすごいスピードで走っている。トレーラーがホッパー?のようなものを2台牽引しているやつが特に怖い。この国道もところどころに歩道や街灯のない箇所があり、眠気と恐怖心が拮抗して変な感じ。また、ものすごく立派な、まるでリゾートホテルのようなラブホテルがあって、へええと感心してしまう。昼間見ればハリボテなのかもしれないが。

01:48 第4エイド(80.4k)。エイドはローソンの駐車場に開設されているので、先に店舗に立ち寄り、焼きおにぎりと温かいお茶を購入。もうこれしか食べられない。食欲はないが、あと20キロもあるので、少しでも食べ続けないとガス欠になってしまう。
このあたりから、道路の途中に冷気が充満した場所(数百メートルだけ特別に寒い区間)がいくつかあって、どうして一様に寒くならないのかわからないが、歩くながらぞくぞくする。

03:53 第5エイド(90.2k)。あと10キロ。第4エイドと同じように、コンビニに入って塩むすびをもとめる。お店の人が「温めますか?」と尋ねてくださるのだけど、何を尋ねられているのかわからず、一瞬ぽかんと考えこんでしまう。目をあけたまま眠っているというか、もう廃人同様の状態。エイドでいただいたわかめスープと併せていただくと、すばらしくおいしい。エイドにはバナナもあるのだけど、食指が動かない。スタッフのみなさんに励まされて出発。
この第5エイドを過ぎたところで、空が明るくなってくる。大型車が多い道路だけに、明るくなることは、安心できてありがたい。

05:06 野中町交差点。あと5キロ。しかし足が前に出ない。第5エイド以降、1キロあたり12分(時速5キロ)を維持できていないので、午前6時前にゴールするのは難しそう…というか、そういう計算も既にできなくなっている。

06:00 前橋市街地に戻り、最後の歩道橋を渡って(意外なことに、歩道橋は全行程で3回、地下道は1回しかない。)、前橋市役所の方角へ進む。はたから見ればかなり滑稽な姿になっていることだろう。最後の2つの信号は短い間隔で連続し、かつ2つ目の信号の赤が長いことをおととい経験していたので、2つ続けて渡りきるべく全力で歩く。そんな力が残っていたことに自分でも驚く。それでも午前6時をだいぶ過ぎて、ようやくゴール。ゲートは「START」から「FINISH」に換装されていて、さらに、1人ずつテープを張って迎えてくださるのですね。ゴール地点のスタッフの皆さんは、昨晩からずっと配置についていると思われ、有難いやら申し訳ないやら。
疲れたというより、今はとにかく眠い。食欲は皆無。

07:00 ご厚意で午前7時に開店してくださった市役所横のお店で温かいうどん。まだ眠いが、ようやく人間の世界に帰ってきたような気がする。

歩数は、11日が100,697歩、12日が46,218歩。ただし両日とも、スタート前後の歩数を含んでいる。

(③感想・分析編に続く)





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2019・第9回ぐんま100参加の記録①準備編 [ウォーキング]

1月 毎年秋に開催されるびわ100とは逆の季節、つまり春に開催される100キロウォークを探してみて、関東地方で開かれるしおや(栃木県)・ぐんま(群馬県)・つくば(茨城県)の3つの大会に興味を覚えた。競技ではないことを明言している点やスケジュール上の都合から、ぐんまに参加してみようと考える。

(↓ぐんま100のロゴマーク。大会HPによれば(少し長いが、以下引用)、「群馬県の県花であるレンゲツツジの花びらモチーフにし、人々が手を取り合って輪を広げていく意味を込めています。レンゲツツジの花言葉は「あふれる向上心。情熱」まさに大会趣旨を象徴するかのような、ピッタリの花言葉です。そして3つあるという3の数字が意味すること •参加者、運営ボランティア、地域それぞれが支えあうこと •お父さんとお母さん、そして子どもたちが協力し合うこと •子どもから大人、そして高齢者まで全ての世代に挑戦の機会を さまざまな想いが、ぐるっと一回りしてそれぞれが関連しあう、そういう輪と和を象徴しています。」(以上引用終わり)ということで、こういう理念を掲げて参加者を募ることは、とても共感できる。

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2月1日(受付初日) 申し込もうとするが、サーバが混雑していてなかなかつながらない。夜遅くになって、ようやく必要事項を入力する。
参加費払込を終えて、数日後に郵便で届いた書類を開けてみると、けっこう後のほうの番号になっている。その後も参加申し込みが殺到した模様で、2月11日正午には満員札止めとなる。期間中に定員に達して募集打ち切りになるのは、この大会では初めてのことらしい。適正な規模にとどめ、いたずらに拡大しないことは、とてもよいことだと思う(申し込む方は大変なのだけど)。

また、参加費とあわせてお納めした若干の寄付に対してたいへん丁寧なお礼状をいただき、かえって恐縮してしまう。大会充実のためにお役立ていただければ、それで十分なのだけど。

初めて歩くコースなので、ウェブサイトに載っていた前回大会のマップを読み込んで学習する。幹線道路をずっと歩くのは、①ロードサイド店などの殺風景な景色 ②信号待ちが歩くリズムのさまたげになる(次の信号が点滅しないか気になって仕方がない) ③雨の日に大型車両の水しぶきをかぶる といった理由であまり気がすすまないが、「ニューイヤー駅伝のコースを歩く」ことがこの大会のコンセプトなので、いたしかたない。

次に、歩行中の栄養補給について考える。
余分な荷物は少しでも減らしたいし、ほぼ全行程幹線道路沿いを歩くから、コンビニやファストフードはたくさんある。なので、なるべく飲料水や行動食を持たず、沿道で補給することにしたい。
それで、100km歩くのにどのくらいの栄養を補給すればいいのか、考えてみる。

まず (1) 基礎代謝。これは年齢性別身長体重から、およそ1,300kcalと推定。
次に (2) 歩くことによる消費カロリーの計算。
この計算は、歩くスピードによって値が異なってくるのだけど、とりあえず体重と歩行時間(22時間)を固定して計算すると、
分速67m(時速4.0km)→ 3,534kcal(歩行距離88km)
分速80m(時速4.8km)→ 4,123kcal(歩行距離105.6km)
と推定される。
(以上(1)(2)ともカシオ計算機ウェブサイト「ke!san」による)

上記(1)(2)の合計は、4,800~5,500kcalとなるのだけど、これだけの栄養をどうやって摂取すればいいのだろうか。スタート前の朝食で1,000kcalをとり、エイドでいただくパンやおにぎりで1,000kcalをとったとしても、残りの2,800~3,500Kcalは、持参するか、コンビニで買うか、外食の店に入って食べる必要がある。

では、コンビニで調達可能な食事ってどんなものがあるのだろうか。コンビニをよく知っている人なら考えるまでもないだろうが、ふだん滅多にコンビニで買い物をしないので、この機会に店に行って、「歩きながら食べられる高カロリーのもの」を物色する。

まず、コンビニの代表格であるセブンイレブン。
一口サイズのお菓子だと、
 ・バウムクーヘン 280kcal
 ・チョコチップスコーン 383kcal
店頭の蒸し器に並んでいる中華まん
 ・肉まん 245kcal
 ・あんまん 286kcal
定番のおにぎり
 ・ツナマヨ 225kcal
 ・梅 166kcal
菓子パン
 ・メロンパン 405kcal
 ・チョコブレッド 336kcal
…と並べていくときりがないのだけど、1回につき300kcalとしても、4,500kcalのためには15回調達しなければならないことになる。これは面倒すぎる。

続いて、コース上に1店舗だけあるスターバックス。
 ・シナモンロール 477kcal
 ・アメリカンワッフル 241kcal
となっていて、さすが米国のコーヒーチェーンだけあって高カロリーなのだが、まあ限界がある。

では外食チェーンはどうか。タイムロスになることさえ我慢できれば、かなりの高カロリーが期待できる。例えば吉野家のウェブサイトでは
・牛丼並盛 652kcal
・牛カルビ丼並盛 839kcal 
となっている。しかし、3,500kcalを摂取するために、24時間に牛カルビ丼並盛を4回食べられるかというと、勘弁してほしいところ。

結局、どのような方法をとるにしても、一度にたくさん食べるのは無理なので、少しずつ食べ続けるしかない。問題は、終盤になると、その「食べ続ける」こと自体ができなくなってしまうことなのだけど。
結局、行動食を減らすという当初方針とは逆に、柿ピーとドライフルーツを大量に携行し、それが食べられなくなったら(その先は)コンビニで食べられそうなものを探すことにした。

5月2日 日本気象協会の10日間予報では、11・12の両日とも曇か雨となっている。特に12日は降水確率80%。雨用の靴やら何やらを運ぶのは大変なので、降るのか降らないのか、どちらかにしてほしいところ。大雨だったら出走取消も考えないと…

5月4日 一週間前なので、炭水化物を減らしてカーボローディングの真似ごと。

5月8日 両日とも曇で降水確率40%に。曇は一番ありがたい天気(日中気温が上がりにくく、夜間下がりにくいから)なので、天気が曇になるか雨になるかで天国と地獄なのだが…

5月9日 降水確率は11日0%、12日30%とほぼ雨の懸念が解消されたのはよかったが、11日の最高気温が28度の予想に…暑い中で幹線道路を歩くので、熱中症対策を考えないと。

5月10日 応援団(家族)とともに前橋へ移動。炭水化物を大量に摂取。明日は予報どおり、いい天気で暑くなりそう。なので、ハイドレーションには午後の紅茶(無糖)ではなく、グリーンダカラを入れることにする(気休め)。明日の打合せをして、早めに就寝。

(②当日編に続く)


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第132回深夜句会(5/23) [俳句]

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(選句用紙から)

カウボーイ風の藺帽子少し変

季題「藺草」で夏。藺草で編んだ帽子、それもカウボーイハットのような帽子をかぶった人がいるのだけど、何しろ藺草であるからして、編み目が表に現れたりしていて、なんだか妙ちくりんな感じ。その違和感を「少し変」と言い切ったところがこの句の眼目。こういう口語的な表現って、できそうでできない。

薫風や大道芸に百人余

季題「風薫る」で夏。大通りか広場かで大道芸が行われていて、そこに人だかりがしている。広い場所全体に薫風がふきわたっていく心地よい感じ。「百人余」か?「百余人」か?と質問してみたところ、「百余人だと百人とちょっと、つまり103人とか105人とかのニュアンスだけど、百人余だともう少し多い110人とか120人のニュアンス。だからこの句は百人余でよいはず」なるほど。

働けるいまが幸せ緑さす

季題「新緑」で夏。検討のしがいがある句というか、上五中七まで一気に言っている内容と、下五の季題がどう結びつくのか考えどころ。教科書的?には、新緑の生命感とかエネルギーにあふれた感じがそれと結びついているということになるのだろう。他方で、季題が動くのではないかという指摘もありそう。「鰯雲」とか「島の夏」とか「里の春」とか。
鈴木真砂女の「今生のいまが倖せ衣被」を連想させるという感想も。それを受けて「でも、あの句よりこちらのほうがいい」という意見も。私もそう思う。衣被の句は、まとまりすぎていて、俳句という形式の可能性について誤解を招くというか、そういうことを言うのが俳句だと思われてしまうのがいやだ。いや、もちろん、そういうことも言おうと思えば言えるのが俳句なのだけど、そのために俳句があるわけではないということ。

(句帳から)

順番に官舎壊され花茨
三条のスターバックス川床涼み
麦熟れてみつしり揃ふ色とかたち
オリーブのわづかな花芽わづかに黄


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番町句会(4/12) [俳句]

締切ギリギリに到着してみると、きょうのお題は「復活祭」。
さて困った。

(選句用紙から)

復活祭の御堂やいまも畳敷

明治時代に建てられた礼拝堂なのか、それとも江戸時代の「隠れキリシタン」のお堂なのだろうか。「いまも」お堂の中が畳敷きだという、その「いまも」のあたりに歴史や事情が感じられるところ。畳に正座して礼拝をとりおこなうことって、私は経験したことがないのだけど、どんな感じがするものだろうか。

船で来る復活祭の神父かな

長崎の離島の教会とかでしょうか。ここで「船」がどんな船かは描かれていないので、漁船に便乗して渡ってきていると読んでもよいし(面白い)、観光客や転勤者といっしょにフェリーでやってくると読んでもよい(これも面白い)のだけど、「神父が島にやってくる」というシチュエーション自体が、そこに根付いた信徒さんの文化(しかし神父が島の教会専従ではないことからして、それほど巨大な島ではなさそうな前提も)を想像させる。

シャンパンの瓶を重しに花筵

季題「花筵」で春。お花見の敷物が風で飛ばないように、そのへんの石を置いたり、缶ビールを置いたりするのだけど、シャンパンの瓶を置いたというのですね。理屈をいえば、シャンパンの瓶はガス圧に耐える分だけワインボトルより厚くて重いので、重しに向いているのだけど、そういうことをいちいち言わなくても、オッサンの花見でないことがうかがわれるわけで、おつまみも洒落たものだったりするのだろう。いいですね。

(句帳から)

街の灯を映して春の夜の雲
ママ友の送別会の花見かな
椿寿忌や左手頬にあてたまま
花冷や水銀灯の青光り
イースター・エッグ遺され書類棚

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おおうちそのよ「歩くはやさで旅したい」(旅行人、2018) [本と雑誌]

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これが「どのような旅の本なのか」と問われると、説明が難しい。
同じ場所に同じカメラを構えれば同じ写真が撮れるとは限らないのと同様、同じ風景を見ても、この作者の目には、このように映るのですね。俳句という文芸は、感じ取る力と言葉に置き換える力の両方が必要なわけだけど、このように感じ取る目を持っていること自体が、稀有な感じ。

本書は、旅の具体的な情報を求めて読む本でもなく、紀行文やエッセイとも違う。しいて言えば、旅とは何か、について、直接論じることなく示唆している本というべきだろうか。蔵前仁一さんの「ホテルアジアの眠れない夜」とか田中真知さんの「孤独な鳥はやさしく歌う」とはまた違った、旅することが人間にもたらす何かを考える上で重要な気づきが得られる名著。「旅行人」連載時に楽しみにしていたコーナーでもあり、腰巻きで蔵前さんが「どうしてもこの本を出したかった」と書いていることに深く共感する。



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第131回深夜句会(4/11) [俳句]

急に寒さがぶり返して、立春とはいわないまでも、春浅い2月中旬のような感じ。

(選句用紙から)

犬をらぬ犬小屋のあり花は葉に

季題「葉桜」で春。犬は散歩に出ているのか、もうこの家にいないのか。後者ととりたい。もう主のいない犬小屋は、それ自体が季節感をもたらすものではないけど、そこへ「葉桜」で、庭に植わっているのか街路樹なのかはわからないが、花から葉桜になって、庭が、つまり犬小屋の周囲が、少し「暗くなってきた」ことと、犬がもういないことが響きあっているように感じられる。春愁という季題にも通じる感じ。

納品を終えて仰げる桜かな

「納品を終えて」がいい。
「納品」であって「納入」じゃないので、形があって、かつ、そんなに大きくないものなのだろう。事務機器とか食料品とかを小さな会社に納品して、そこから外に出たところで、道路に桜が咲いている、というような風景。ものすごく大きなビルだと、納品は納品だけど、納品を終えて外に出るまで時間がかかるし、やっと外に出ても、ビルのほうがずっと大きいから、この句のような「仰ぐ」感じになかなかならない。
また、個人の住居だと、わざわざ「納品」と言うこと自体が大げさな気がする。


紺色の肩の花屑触れもせず

季題「花屑」で春。紺色の、は花屑にかかるはずがないので、肩にかかるとすると「紺色の肩」って何だとなるのだけど、ブレザーか、紺色のワークシャツなのだろう。で、その恰好で桜の下を通りすぎた人の、肩のあたりにふと花片が落ちて止まった。しかしその人は、その花片に気づいたのか気づいてないのか、それに触れもせず歩み去ってしまった。なんでもないことのようだが、そこに詩情があるのですね。
また、ここで「触れもせず」を、「隣で一緒にいた自分」のこととして鑑賞すると、一句の感じはぐっとロマンティックなものになる。

(句帳から)

花筏善福寺川蛇行して

 
  
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スコット・ジュレク『NORTH 北へーアパラチアン・トレイルを踏破して見つけた僕の道』(栗木さつき訳、NHK出版、2018) [本と雑誌]

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アパラチアン・トレイル(AT)を南から北へ走って、最速(最短時間)踏破記録をめざす話、と要約してしまうと身も蓋もないのだけど。
時間との戦い。自分との戦い。サポートする配偶者の視点と本人の視点が交互に語られることで、ものの受け止め方の違いみたいなものを描き出すことに成功している。

また、ストーリー的にも面白い。気楽にスタートしたものの、すぐにケガをしてしまってそこからのリカバリーに苦労するとか、著名なランナーなのでしだいにファンが増えてきて、楽しかったり鬱陶しかったりするとか、アンチが湧いてくるとか。最後は専門家集団?がサポートチームとなって記録達成に向けて全力で支援する。このあたり、最初から最後まで1人で歩いていたら、周囲との相互作用が描かれないことになるので、こういう物語にはならない。

それらを楽しく読んだ上で、ちょっとはみ出すとすると、ロングトレイルは来る者を拒まないので、最速踏破記録をめざすことも一興だと思う。だからといって(そのような誤解はないと思うが)トレイルは競技のためのトラックだと思われても困る。そのあたりは、むしろ読む側の課題なのかもしれない。同じトレイルを歩いても、以前にこのブログでも紹介した加藤則芳『メインの森をめざして―アパラチアン・トレイル3500キロを歩く』とはだいぶ趣が違う。どちらがいいとか悪いとかではないが。




 
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番町句会(3/8) [俳句]

きょうのお題は「蜆」。

(選句用紙から)

蜆掻バカ長穿いて出戻りで

季題「蜆掻」で春。川なのか湖なのか、胴まである長靴(バカ長)をはいて水に入り、柄のついた鋤簾(じょれん)で水底から蜆を掻きとっているのだけど、詠み手はその女性を知っている。彼女は一度は嫁いだけど実家に戻ってきて、こうして蜆掻きをしているのだ。しかし彼女に向ける詠み手の目は暖かい。春先の、空気の寒さと水の寒さが「出戻り」と微妙に響きあっているところがこの句の眼目。

ウェイターの一人専ら蠅払ふ

季題「蠅」で夏。レストランだか食堂だかに入ったら、そこにはウェイターやウェイトレスが何人かいたのだけど、その中の一人が、もっぱら蠅を追い払う役目を仰せつかってあちこち歩きまわっている。人件費の高いところではそんなことはできないので、そういうことが可能な南の国、ということだろう。半ばうんざりしつつも、半ば面白がっている詠み手の視点が感じられる。


ミッキーとミニー在(ましま)す内裏雛

季題「内裏雛」で春。「まします」とは強烈な皮肉。こんなものを有難がってどうするんだよ、という詠み手の声が聞こえてきそう。俳句の表現としてギリギリのところに踏みとどまっている。
しかし、これを皮肉と受け取らない人もいるのかしら。それは、詩人としての想像力に欠けると言われても仕方がないのでは…というより、これが皮肉や嫌悪でなかったら、この句は全然面白くないわけで。


(句帳から)

春泥にテントをたたみ次の町へ
三月のポストの底に当たる音
蜆汁石山寺へ続く道

 
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マーク・ヴァンホーナッカー『グッド・フライト、グッド・ナイト』(岡本由香子訳、ハヤカワ文庫、2018) [本と雑誌]

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山ほどある「航空関係者が語るエアラインこぼれ話」とか「パイロットが語る飛行機物語」の類とは一線を画し、独自の詩情をたたえた(しかし、下手に文学づいていない)エッセイ集。従って、そのようなこぼれ話や雑記を探す向きには物足りないかもしれない。多少おおげさにいえば、「人間の大地」や「夜間飛行」に通じるような詩情(直截なものではないが、通底するものとしての詩情)が感じられる。他方で、実用書としての価値がないかというとそんなことはなくて、気象や天文についての知識を大幅に増強してくれる一冊でもある。

上記のような詩情を感じられる理由は二つあって、ひとつには、文化の多様性に対する著者のゆるぎない支持や信頼があること、もうひとつには、さまざまな古典を適切に引用しながら、自分の言葉を選んで表現を練り上げているところだと思う。

さまざまに変化する空や水や人の描写は、時として俳句の写生を思わせるところもあり、また、飛行機を飛ばすために働いているさまざまな人々の強い仲間意識がほほえましく感じられる。この本を読んだあとでは、空港や機内、窓から見える地上や空の上の景色も少し違って感じられることだろう。





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第130回深夜句会(3/14) [俳句]

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カフエ「マメヒコ」には大きな連翹が活けられている。カフェの照明の色とよく響きあっていて、とても好ましい。

深夜句会はきょうでめでたく130回。

(選句用紙から)

先生が言訳をしてあたたかし

季題「暖か」で春。先生が言い間違いだか(板書の)書き間違いをして、それを生徒に指摘されて
むにゃむにゃ言っている。そのむにゃむにゃを好意的に受け止めている生徒。先生との信頼感あるいは適度な距離感のようなものがあって、それが醸成された学年末という感じがする。
このように句評したら、「いや、むしろ年度初めの授業でで、こんな先生がいた!という発見の句のように読める」という指摘があった。なるほど。そう言われればそんな気もする。

春の夜の酒の肴のさつまいも

これは詠めそうで詠めない句。「春の夜の酒の肴の」と煽っておいて、さあ何が来るかと待ち受けていると、さつまいもが来るという趣向。これが「里芋」だと当たり前すぎるし、「じゃがいも」でも当たり前かつビールの肴でしょ、ということになるのだけど、大学芋みたいな甘いものをつつきながら、一人で酒を飲んでいる風景が、なんとも自足した感じで心地よい。

(句帳から)

連翹にわづかに兆す緑かな
連翹に幹といふものなく黄色
永き日の音楽室の肖像画


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エネルギー保存の法則? [皿回し]

きょう(2019.3.8)の日経1面。

「リース取引 資産計上へ」
機械や設備を購入せずに借りて利用する「リース取引」に関する会計基準が変わる。今までは企業の財務状態を表す貸借対照表(バランスシート)に記載する必要はなかったが、ルールが変わればリースの金額を明記する必要が生じる。上場企業全体を表す「日本株式会社」の資産は17兆円増える計算。リース離れの懸念に加え、資産効率を表す指標は数値上悪化するが、国際標準並みに財務の透明性を高める。

下線の部分、皿回し的におかしくないですかね。
オペレーティングリースを資産計上すれば、計上した企業のバランスシートには資産とリース債務が両建てで計上されるので、確かに「資産(と負債)が増える」わけだけど、その資産は、それまでリース会社の貸借対照表に計上されていたわけでしょ。リース先で計上された分だけ、リース会社のバランスシートから除かれるわけだから、「日本株式会社」全体の資産は増えも減りもしないのではないの?
この表現が成り立つとすれば、そのリース資産がことごとく上場会社「以外」に帰属していた場合だけだが、そんなわけないと思うのだけど。誰か教えてジェネラル!

 

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第129回深夜句会(2/14) [俳句]

いつもお世話になっているカフエ「マメヒコ」のメニューから「マグ茶」が消え、出てきたお茶を楽しむことができなくなってしまったが、それぞれのお茶がおいしいことに変わりはないので、引き続き紅茶をお願いする…といいつつ、きょうはおよそ10年ぶりの「牛乳珈琲」。

(選句用紙から)

粉雪の虫のごとくに曲がりけり

季題「粉雪」で冬。粉雪の動きについての句で、強風でないときの粉雪の動きにちょっとしたゆらぎがある様子をうまくとらえている。強風だったら一方的に流れていくだけなのだけど、無風に近いときには、まっすぐ落ちるかに見えつつも、地表近くのちょっとした風を受けて、あたかも羽虫か何かのように不規則に動くのですね。
ここで「曲がる」ということばが、右に曲がるとか左に曲がるとか、はっきりとした意図をもって行き先を変えているように読めるという意見もあって、それはそうなのだけど、あっちへ曲がりこっちへ曲がりする様子としては、これでもいいのではないかと。


受験生下宿のチラシ受け取れる

季題「受験(試験)」で春。入学試験を終えた受験生(実景では試験に臨む受験生だったそうだが)に不動産業者が近隣のアパートやマンションのチラシを配っている(昔風の賄い付きの下宿屋ではないのか、と問われそうだが、試験会場でそこまでやるのは不動産屋でしょう)。で、この句の面白いところは、それを受け取る受験生の、わずか数秒の心の動きが自分でも追体験できるところ。つまり、試験に落ちればチラシなんか無用の長物どころかいまいましい代物なのだけど、めでたく合格していれば一刻も早く物件を探しに行かなければならないわけで、受け取るか否かを考えている数秒間が必ずあるはず。

如月のチョークの白のすべりたる

「すべりたる」の句意はどちらにあるのか。つまり、きょうは黒板に文字がかみあわず、しばしば滑った(ので板書がしにくかった)ということだったのか、寒さでかじかんだ手からチョークが滑り落ちたか、どちらとも読めそうだ。私は後者で読み、二月のあわただしさとか焦燥感みたいなものを描いているのではと考えたが、合評で出た意見は、それなら「白のチョーク」とするはずだ、というもの。チョークの白、というからには、白に焦点をあてている意図があるはずと言われればそんな気もするが、それだと、二月とのつながりはなくてもよいことになってしまうわけで、悩ましい。

(句帳から)

強東風や工事現場に水撒いて
同じ向き同じ傾き福寿草

  
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深緑野分『戦場のコックたち』(東京創元社、2015) [本と雑誌]

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文庫になるまで待つとか言ってないで、もっと早く読むべきだった。
一応謎解きの形式になっているのだけど、そういうジャンル分けが無意味に感じられる力作。これが長編デビューとは、にわかには信じられないほど。
2018年の個人的第2位が、最後の最後にやってきた(ちなみに1位は吉田裕『日本軍兵士』(中公新書、2017))。

エピローグを読みはじめて、最初「なんでこんな余計なものを?」と感じたが、そうではなかったのですね。このエピローグこそが、この本のコアなのでしょう。

 


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番町句会(2/8) [俳句]

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きょうのお題は「春時雨」。
「時雨」とも「秋時雨」とも違う「春時雨」をどう詠むか考えどころ。

(選句用紙から)

たてもの園宿根草園日脚伸ぶ

季題「日脚伸ぶ」で冬(晩冬)。
大きな公園のような場所で、その一角に「たてもの園」(古民家などを移設したのであろうか)があり、また別の一角には「宿根草園」がある。それに出入りしながら移り歩いていると、ひと月前ならもう暗くなっているような時間になっても、まだ明るくて、もう少し園内を歩くことができる。
この句の眼目…というか狙いはちょっと普通でなくて、「たてもの園」と「宿根草園」という、MECEでないものをわざとぶつけてくるところにある。本当は「たてもの園」の横に「建物附属設備園」とか「構築物園」とか…は冗談、まあ「のりもの園」とか、建物と並列できる程度「〇〇園」もあるのだと思うけど、全然そうでないものを並べて、その気持ち悪さを楽しむ(そういう場所が実際にありそうなだけに)という一句。同様に、「一年草園」「宿根草園」とかなら、まあどこかの植物園なんでしょう、で終わりなのだけど、わざと外すわけですね。

スカールの戻つてきたる春時雨

季題「春時雨」。スカールは「シングルスカル」とか「ダブルスカル」などと呼ばれる競技用のボートで、乾舷が小さく、静かな水面でないと漕げないから、湖とか川、たとえば瀬田川なんかが想像される。見え隠れするほど濃密に降り注ぐわけではないのだけど、降っては止んでの中を、雨に濡れたスカール(漕ぎ手も濡れている)が艇庫に戻ってきた。

春の風邪薬がはりの一二冊

「風邪」は冬の季題だが、ここでは「春の風邪」なので、その気分を描いた句になっているかを考えると、薬を飲むでもなく、文庫本を一二冊携えてソファーで楽にしていよう、という程度の風邪なのだろう。「薬がはりの一二冊」がいいですね。どんな本なのか。古典なんかが連想されるのだけど。


(句帳から)

駅前に本屋と飲み屋春時雨
焼菓子のにほひ流れて日脚伸ぶ
あらかじめ間引き運転春の雪

  
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第128回深夜句会(1/24) [俳句]

番町句会をお休みしてしまったので、これが2019年の初句会。

(選句用紙から)

落葉道落葉豊かな方歩く

季題「落葉」で冬。この「落葉道」が広い歩道なのか、公園なのか、それとも山道なのか定かでないが、落ち葉を踏んで歩いて楽しんでいる心の弾みが句になっていて快い。さくさくとかぱりぱりといった音が聞こえるようだ。落葉道、とした上で、もう一度「落葉豊かな」と重ねているところも周到。

ゆるやかに曲がりて鴨のひとならび

季題「鴨」で冬。ただの「ひとならび」でなく、ゆるやかに曲がりて、としたことで、自然の作為というか、天然のありようをうつしだすことに成功している。ここでは、縦一列になってるのか横一列に広がってるのかは示されていないが、おそらく縦一列で、それがまっすぐでなく、すこし曲がった列になっているのだと思われ、また、それだけの広さのある水面であることも判る。

油揚げ突(つつ)く鴉や寒施行

季題「寒施行」で冬(1月)。なんともいえない哀感というべきか、油揚げがカラスにつつかれてしまうわけですね。しかし識者によれば、カラスは全部を食べてしまうのではなく、もっと序列が下の鳥が食べられる程度には残すものだというが。



(句帳から)

歩道から車道に下りて寒雀
紙漉くや眼下はるかに村役場
寒月がスカイツリーのうしろから



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