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村上春樹「ヤクルト・スワローズ詩集」(「文學界」2019年8月号) [本と雑誌]

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大久保孝治さんのブログ「フィールドノート」7月15日分を読んで、村上春樹がかつて同名の私家版を頒布していたものと勘違いし、「日本の古本屋」などで検索してしまった。そうではないのですね。勘違いに気づいて本屋に走り、まだ積んであった「文學界」8月号を入手する。

で、この小説(「ヤクルト・スワローズ詩集」というタイトルの小説です)なのだけど、あくまで小説の体裁をとりつつも、文藝春秋6月号「猫を棄てる」に続き、父親との確執に触れた部分がある。この部分は、もはや小説というより別の何かではないかと思わせるほどだ。

昨年7月11日の日経新聞夕刊に池田克彦さんが書かれていた「村上先生の思い出」と題するコラムで、甲陽学院の教師だった父親がどこかの予備校で、自分は入学の周旋等をしないことを説明し、「私には全く力はありません。現に、私の息子はこの学校の入試に落ちています。こんな私のところに挨拶に来られても何の意味もない」と言ったとあるので、これは随分ひどい話(そういう発言をする父親も、それを書いてしまう池田氏も、それを載せてしまう日経新聞も)だなあと思ったものだが、それから1年経って、これまで決して(記憶の限りでは)このことについて言及しなかった村上さんが立て続けに、父親との関係をとりあげた作品を発表したことに驚く。これは、村上さん自身が「自分の持ち時間」を意識されていることの現れなのかもしれず、すこし心配になる。

なお、もう1編の「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」も、村上さんらしい、胸がしめつけられるような、苦い余韻がのこる小説だった。こちらは小説らしい小説で、かつ、どこから読んでも村上さんの作品とわかる何かが充満している。
 
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