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北村薫『八月の六日間』(角川文庫、2016) [本と雑誌]

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ふだんアマゾンの読者レビューを読まないのだけど、何かのはずみで本書のレビューを見たら、主として高齢の登山者と思われるレビュワーから「実際の○○山はこうではない」とか「山と関係ないことが書かれていて余計」とか書き込まれていて、笑ってしまう。山のガイドブックではないのだから、お門違いとしかいいようがない。だいいち、それを言い出したら、主人公は忙しくてたまにしか山に行けない割にはずいぶん健脚なんですね、などと無限に突っ込むはめになってしまって、全然面白くない。

こういうお門違いが生じる理由は、山を舞台にするとどうしても実在の山や山小屋を持ち出さざるを得ないからで(まったく架空の山でも小説は書けそうだが、あまり面白くなさそう)、これが例えば野球やサッカーを題材にした小説だったら、ボールが消えようが、弱小チームが甲子園に出ようが、要するにどれほど現実離れしていても「設定が安易すぎる」とか言う人は少ないと思うのだけど、「槍ヶ岳」とか「大天荘」とか固有名詞が出てくるので、ぐだぐだ言いたくなってしまうのも無理ない面もある。

また、昨今のご時勢では、ここに書いてあること(だけ)を全部そのまま真に受けて、暗くなってから山小屋に着いて平気とか、ザックの中はお菓子ばっかりとか、本当にそういう登山者が現れないとも限らないので、本文と解説(瀧井朝世さん)のあとにわざわざ、

(以下引用)
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「この作品はフィクションであり、(中略)作品中で描かれている登山時間や必要な道具類などはあくまで「主人公の場合であり」、季節や天候、コース状況、各人の体調や経験などによって大きく異なります実際の登山の際は、山小屋や登山用品店のスタッフなどプロの助言のもと、万全の装備で無計画な登山は避け、無理をせず自分のペースを守って登るようにしてください。(以下略)(p.323)
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(以上引用終わり)

と書かれている。だから本当に、山のガイドブックではないんだってば。それにしても、地図も登山ガイドも読まず、この本に依拠して山行計画を立てる人がいるのだろうか…豆腐の角に(以下自粛)

この数年でたまたま、山を舞台にした小説として『春を背負って』『山女日記』そして本書『八月の六日間』を読んだが、それぞれに違った特色をもつ作品で、登山経験があろうとなかろうと、楽しめるのではないか。

 


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第125回深夜句会(10/25) [俳句]

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急に寒くなる。高層ビルの上に出ている月がきりっとしていて、既に冬の月の色になっている。

(選句用紙から)

紫の絵の具めきたる式部の実

季題「紫式部の実」で秋。実むらさきとも。
紫式部の実の色は、その名のとおり紫色なのだけど、その紫色が、どういえばいいのか、およそ天然の産物とは思われないような色をしている(従って、コーティングしたお菓子のように見える)ので、「絵の具めきたる」は共感できるところ。おそらく類想・類句がいろいろあるのだろうが、不勉強で存じあげないので、迷わずとらせていただく。

湖北より湖南に流れ鰯雲

どこの湖かということは書かれていないが、日本で湖北とか湖南とかいえるぐらい大きな湖といったら、まず琵琶湖でしょう。実際に「湖北地方」という言い方をするし。で、秋になってその大きな湖の上を、北から南へ鰯雲が渡っていくのですね。空の大きさと、その下にある湖の大きさが活きている。

満月の磧に来れば一人ゐる

季題「月」で秋。月を愛でるためか、それ以外の用事があったのか、満月の夜に河原に来てみると、そこには先客が一人いた。それが誰だとか何をやっているとかは語られないのだけど、真っ暗な夜の河原に、満月の光を浴びてたたずんでいる先客の姿がおそろしくも鮮やか。一方、「来れば」を「来たので」の意味にとると、一人ゐるのは自分ということになるのだけど、「来たので」「一人ゐる」という理路がよくわからないから、やはり「来てみると」と解するほうが自然であるように思われる。

(句帳から)

秋晴や昼からあいてゐる酒場
鉄橋を気動車徐行秋惜む
よもすがら秋のをはりの雨の音

 
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2018・第5回びわ100参加の記録③感想・分析編 [ウォーキング]

(②当日編から続く)

〔全体総括〕
・2度目の挑戦で完歩できたことに、ほっとする。去年の第4回大会を53km(第2CP)でリタイアして以来、ずっともやもやしていた気分がすっきりした。80km(第4CP)以降は意識がぼんやりして、体力の限界に近かったような気がするが、そんな大げさなものではなく、単に眠かっただけかもしれない。

・完歩できた理由の第一は、大会サポーター(スタッフ)の皆さんの熱心かつ強力なご支援だと思う。チェックポイントやエイドステーションでの出場者への対応は、すばらしいものだった。オレンジ色のウインドブレーカーは、特に夜間には存在自体が励ましになった。大会運営の特色については後記。
理由の第二として、天候に恵まれたこと。具体的には、①2日間ともよく晴れ、雨がほとんど降らなかったために歩きやすく、かつ荷物が減らせたこと ②20日の強風が、当初予想の北西の風ではなく、北北西ないし北の風であったため、若干の追風効果があったこと ③21日朝の冷え込みがきつかったとはいえ、歩行に支障を生じるほどではなかったこと の3点。

・これに対して、後半の各地点での休憩が長すぎたことは、今回最大の失敗だった。長すぎる休憩は、それ自体がロスタイムになると同時に、体が冷えて歩行再開後のペースが上がらない原因ともなるわけで、もう少し上手にペース配分すれば(つまり、もう少しゆっくり歩く代わりに休憩時間を切りつめれば)22時間を切るのはむろんのこと、21時間を切ることも可能だったのではないかと思われる。歩き方についても後記。

〔大会運営について〕

・びわ100以外の100キロウォークに参加したことがないので比較することはできないが、この大会は、その理念において、すばらしい面があると思う。
具体的には、
(1) 一人でも多くの完歩者を出すために、制限時間を30時間と大幅に遅くしていること(これは運営上、非常に負担が大きいところ、あえてそうしていると思われ、その理念は大いに称賛されるべきと思う)。また、競技色を排除するために、チェックポイントの開設時間を遅くしていること。
事実、今大会でも午後2時台(28時間台)と午後3時台(29時間台)にゴールされた方が212人もいて、その数は一般の部の完歩者556人の38%にも達している(全体データはこの記事の末尾に示す)。まる1日以上、30時間近くも歩き続けたこれらの方こそが、びわ100の主役なのだと思う。タイムを縮めたいとか何時間を切りたいとかいう当方の思惑は、そうした主役や運営者の邪魔にならない範囲で、静かに検討すべきことだと思っている。

(2) チェックポイントやエイドステーションごとに工夫をこらした歓迎ぶりで出場者を休ませ、また元気づけていること。今年は5か所のチェックポイントごとに小さな缶バッジをくださり、全部揃うと「ありがとう」になるというおしゃれな趣向も。寒い中で前記オレンジ色のウインドブレーカーを着て励ましてくださったサポーターのみなさんもまた、びわ100の主役なのだと思う。

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・遠方からの参加者として、しいて希望することがあるとすれば、次の2点。
(1) 各コースのスタート時間を、なるべく繰り上げてほしい
 遠来者は長浜に前泊せざるを得ない。従って、極論すればスタートが午前7時でも8時でもかまわない…というよりも、せっかく滋賀県まで来たからには、明るいあいだに少しでも琵琶湖の景色を楽しみたいので、夜明けと同時にスタートが理想。
(2) 中間地点での荷物取り出しを復活させてほしい(または、途中地点への補給物資送りを行ってほしい)
 これをやるためには、運営者は預り荷物をスタート地点→中間地点→ゴール地点と順次運ばなければならず、大変なのはよくわかるので、あまり強く求めるものではないが、家族や友人から沿道で補給や支援を受けることができない遠来者としては、やはり中間地点で荷物を入れ替えることができればありがたい。入れ替えるのが難しければ、せめて、荷物とは別に、中間地点に送るためだけの小さな袋か箱を受け付けて、最低限の補給物を送れるようにすれば、一応の目的は達せられる。聞くところによると、ウルトラマラソンでは自分の補給物(ドリンクとか)を途中のエイドステーションに送っておくことができるそうなので、これと同じことが実現すればうれしい。

〔歩き方の課題と今後のトレーニング〕

・ペースを乱した原因のひとつは、第2CPと第3CPの間が17kmしかないのに計時開始に4時間差があることだ。これを上手にクリアするためには、第2CPまではあえて遅い時間に通過して、午前0時ちょうどぐらいに第3CPに着くようなペースを考えなければいけないことになる。
 計算上、70km地点(第3CP)に午前0時(スタートから14時間後)に到達するためには、1kmあたり12分のペースでコンスタントに歩き続ければよいことになる。チェックポイントやエイドステーションでのタイムロスを加味して、それより少し早いペースが必要であるにしても、少なくとも、今回の序盤のような1kmあたり10分台とか9分台のペースは、無意味に速すぎたということになる。

・もっとも、前半のペースを抑え目にしたからといって、後半の体力が温存できる保証はないわけで、ひょっとすると時間の経過とともに同じように疲れてしまうのではないかも思う。もしそうなら、今回同様、最初のうちに無理してでも距離を稼いでおくのが正解ということになるのだが。これは、実際に何度も100kmを歩いて実験してみるしかないので、次回は最初から1kmあたり11分30秒ぐらいで(コンスタントに)全行程を歩き、CPやエイドでの休憩は5分以内にとどめることに挑戦してみようと思う。

〔装備について〕

まだ軽量化の余地があると思われる。

・行動食を持ちすぎだった。各種とりまぜ8回分を持参して、5キロおきに補給するつもりだったが、結局7回分しか使わなかった。チェックポイントやエイドステーションでいただいたバナナやおにぎり、チョコレート、お煎餅などで足りてしまったため。本当に足りなければタイムロスを承知でコンビニで買うこともできるので、次回はせいぜい4回分にしようと思う。
また、行動食の内容も、甘いものに偏っていたことが反省点。塩気のある煎餅とかみたらし団子などを交互に摂るような設計にすべきだった。甘いものにしても、ほぼ糖質100%のものと、脂肪や蛋白質を多く含むものと、どう組み合わせるかは今後の研究課題。この点を考えようとすると、生化学の教科書をきちんと読まなければならないが…

・夜の寒さ対策も改善する必要がありそう。具体的には、
(1)どのくらいの寒さを想定すべきか
(2)どのような装備で対応すべきか
の2点。
まず、寒さの想定については、事前の検討で、10月21日の早朝に彦根の最低気温が10度を割り込んだことは過去11年間で1回しかなかったので、あまり深く考えずにレインウェアを防寒着がわりに使ったのだが、実際に歩いてみると、もっと寒かった。何度ぐらいまで下がったのだろう…と調べてみると、15.3度までしか下がっていない。おかしいな…と思い、大津と長浜のデータを参照すると、大津は9.5度、長浜は7.8度まで下がっている(↓気象庁データから藪柑子作図)。同じ県内でも、これほど大きな差があるのですね。このあたり、地元の事情に詳しくない遠来者は入念な情報収集が必要と痛感。ということで、最低気温が10度未満となることを念頭においた対策が必要という結論。

20181020-21 気温推移.png

 その際、レインウェアのシャカシャカ&ぼってり感は、保温力がさほどない上、長い距離を歩くには向かない感じがする。かつ、レインウェアは重い。背負っても着ても重い。大雨ならともかく、防寒着がわりに使うのであれば、もっと軽いレインウェアを持参すべきだった。

・給水について、ハイドレーションを1.1リットル飲みきった時点でコンビニに立寄って補充する予定だったが、あまりの寒さに、冷たい飲物を買い求めて補充する気が起きなかった。それなら、昼間なら冷たいもの、夜間なら暖かいものを、その都度ペットボトルで買って持ち歩いた方がよいのだろうか。これも次回に向けた研究課題。ペットボトルの開閉が煩わしく感じられるので、飲み口のついたソフトフラスクを使うことも有効かもしれない。

・靴の選択はうまくいったようで、靴ずれもマメもできずに済んだ。出発前にワセリンを塗ったが、その後はノーケアで、かつソックスの交換がうまくいかなかっただけに、これは大助かり。しかし、そういう靴ほど早くすり減ってしまうような気がする。

〔主催者から発表されたデータ〕
びわ100コース(一般の部)
 登録者数 821
 出場者数 782
 完歩者数 556 (出場者数に対して71%、登録者数に対して67%)
       ↓
 完歩者556人のゴール時間帯別内訳
  午前7時まで(=21時間以内) 33
  午前8時まで(=22時間以内) 36
  午前9時まで(=23時間以内) 38
  午前10時まで(=24時間以内)51
  午前11時まで(=25時間以内)49
  正午まで  (=26時間以内)48
  午後1時まで(=27時間以内)47
  午後2時まで(=28時間以内)46
  午後3時まで(=29時間以内)86
  午後4時まで(=30時間以内)122

アスリートコース(健脚の部)
 登録者数 76
 出場者数 70
 完歩者数 62 (出場者数に対して88%、登録者数に対して81%)
       ↓
 完歩者62人のゴール時間帯別内訳
  午前7時まで(=18時間以内) 10
  午前8時まで(=19時間以内) 11
  午前9時まで(=20時間以内)  8
  午前10時まで(=21時間以内) 8
  午前11時まで(=22時間以内) 9
  正午まで  (=23時間以内) 4
  午後1時まで(=24時間以内) 6
  午後2時まで(=25時間以内) 3 
  午後3時まで(=26時間以内) 1
  午後4時まで(=27時間以内) 2

〔スポーツウォッチのデータ〕
 歩数 10月20日93,325歩 21日55,249歩
 心拍数 20日 最高値147/最低値64
     21日 最高値130/最低値43

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2018・第5回びわ100参加の記録②当日編 [ウォーキング]

(①準備編から続く)

夜中に咳で目が覚めてしまう。これは困った。
朝起きて外を見ると、小雨が降っている。降水確率10%だったはずでは…
テレビをつけてみると、気圧は高くて安定している(確かに理想的な天気図…)が、高層に冷気が流れ込み、大気が不安定な状態だとのこと。

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幸い、わずかに路面が濡れる程度の雨だったので大事には至らなかったが、ショートスパッツが要るかもしれないな…と荷物に加える(結局使わなかった)。
長袖Tシャツ+ショートパンツの組合せは事前に2種類用意しておいた。気温が高いとき用(薄手)と気温が低いとき用(厚手)の2種類なのだが、最後まで迷った末、厚手のセットを選ぶ。これは大正解だった。
ハイドレーションの1.5リットルパックに「南アルプス天然水はちみつレモン」を約1.1リットル給水。
咳が止まらないので風邪薬をのみ、かつ、マスクをして会場に向かう。もともと帽子をかぶりシェード(日除け)を垂らしているので、マスクが加わるといっそう怪しい風体になるが、いたし方ない。

・0km スタート地点で開会式。雨はあがっている。10時にスタートするコースには、たしか811人が登録していたはずだが、実際に何人が歩くのだろうか。予定どおり10時にスタート。今年は最初からストックを使う。

・5km 予報どおり北西の強風…というか暴風に近い。体の右側から左側、つまりびわ湖側から道路側への横風で、左右のバランスを保つのが難しい。こんなときにはストックが役に立つ。湖面には白波が立っていて、まるで海のようだ。雨よりはずっとましだが。

・10km 去年より早いペース。1キロ10分を切っている。ついて歩くのに都合のよい人(速すぎず遅すぎずな人)が周囲にいないので、どうしてもペースが早くなってしまう。

・15km 彦根城の周囲では「ゆるキャラ」をテーマにしたお祭りの最中らしく、かなりの人出。ぶつからないように気をつけながら歩く。濠端で右側ストックの保護カバーが下水溝の蓋の穴にはさまり、あっと思ったときには脱落してしまった。まだ85kmもあるのに…

・20km 前後の歩行者との間隔が開きはじめる。去年は23kmの地点にカメラマンがおられて、通過者を次々に撮影してくれた(クラウド上で公開される)のだが、ことしは見当たらない。幹線道路から外れて湖岸の集落を縫う生活道路を歩くと、急に静かになる。家の前に人が出てきていたり、草むらで鳴く虫の声が聞こえたり、歩いていて気分がよい。

・25km 公園のトイレに立寄る。ふと横を見ると、去年の大会で、濡れた靴下を交換したあずまやが見える。あれから1年経つのか…

・30km 依然として強風。しかしさっきまでの北西つまり横風から、いまは北北西または北の風に変わっていて、わずかに追い風になっている。橋を渡って彦根市から東近江市へ。彦根市内をつごう20km近く歩いたことになる。すぐに東近江市から近江八幡市へ。

・32km 第1チェックポイント。スタートから5時間半余。去年より20分以上早い…というか早すぎる。クラブハリエで有名な「たねや」の法被を着たサポーターの方から末広饅頭と、メッセージが書かれたバナナをいただく。思わず「去年ここのCPでいただいたお饅頭がおいしくて、今年も楽しみにしていたんです!」と口走ってしまった。ビバ末広饅頭。靴下を交換し、現在位置を家族に知らせ、昼の分の風邪薬をのむ。去年も見かけた車椅子の出場者が、向かいのベンチに座っておられる。
今年は、チェックポイントごとに小さな缶バッジをくださるようだ。かわいいデザイン。

・40km 長命寺の交差点の先で日没。湖のむこうの山に沈む夕日と湖面が、映画のワンシーンのように美しい。明るいうちに41kmのエイドステーションにたどりつこうと急ぎ足でがんばる。エイドステーションでおにぎりと豚汁。ここでいただくおにぎりのお米は、大変おいしい。エイドステーションを出るともう真っ暗で、月が明るく見える。
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・45km 幹線道路の右側(湖岸側)を進む。32kmから53kmまでは、人家の少ないところを通るので、信号がないのは嬉しい反面、目標物が少なくてやや寂しい。去年のコースだった左側(内陸側)の歩道よりずっと幅が広く歩きやすいのだけど、対向車のヘッドライトがまぶしくて歩道の路面がよく見えないのが残念。
 参加者のバックパックには大会本部支給の点滅灯が後ろ向きに取り付けられているので、暗闇の中でも前に人が歩いている様子がわかるのだが、追い抜くよりも追い抜かれることが多くなってくる。40kmまでのオーバーペースが災いして、しだいに減速気味に。
 湖岸のオートキャンプ場で、火をたいてバーベキューをしているのが見える。別世界。

・50km 河口にかかる高い橋を渡る。暗い上に風が強いので少々怖い。右前方に守山市街地や琵琶湖大橋の灯火が見えてくる。
 前後の選手が遠く離れ、沿道に人家もないので、ピッチを上げるため小声で歌いながら歩く。万聖節も近いので、♩=110ぐらいで"For all the saints"を何度も何度も繰り返す
(以下引用)
For all the saints, who from their labours rest,
Who Thee by faith before the world confessed,
Thy Name, O Jesus, be forever blessed.
Alleluia, Alleluia.
(以上引用終わり)

・53km 第2チェックポイント。スタートから9時間47分。去年より11分早い。まだ計時がはじまっていないので、およそ50人ほどの出場者が整理券をもらって計時開始を待っている。その間に靴下を替え、いただいたあんぱんとクリームパンを食べる。20時になって計時してもらったあとも、なんとなくダラダラ休んでいて、結局30分ぐらい長居してしまう。
20時10分すぎ、ようやく重い腰をあげて出発する。去年はここでリタイアしたので、ここから先は未知の領域。歩く方向がわからなくなり、スタッフの皆さんに「こっちですよ!」と指示してもらう。

・55km ショッピングモール「ピエリ守山」の前を通過。ずいぶん立派なショッピングセンターで、本屋の看板も見えるが、本を買いたい気分ではない。ここでびわ湖畔を外れ、内陸の幹線道路へ。

・60km エイドステーション。マッサージを受けられるかも、とテントをのぞいてみたが、混んでいるようなので先へ進む。
交差点を右折して栗東市に入る手前の広い歩道で、13時に(3時間後に)スタートしたアスリートコースの先頭選手に軽々と追い抜かれる。そのスピード差に、ちょっとした衝撃を受ける。

・65km 草津市に入る。あらかじめ調べておいたコーヒーショップに入り、小倉トーストと紅茶を注文して休憩。夜の分の風邪薬をのみ、ハイドレーションがカラになっていることを確認(寒いので、補給はしないことにする)。2回目のトイレ。両下肢にロキソニンテープを貼る。暖かくて居心地がよいので、つい長居してしまう。結局40分近くもぐずぐずした末、防寒着がわりのレインウェアを羽織って外に出てみると、気温が10度近くまで急激に下がっている。しまった。上だけでなく、下(レインパンツ)もはいておくべきだった。
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・70km 第3チェックポイント。午前0時に計時を開始するので、開始直後の00時05分ごろ着くように歩くつもりだったが、喫茶店に長居したのが原因で00時25分になってしまう。ここでもマッサージの待ち時間がかなりありそうなので、先を急ぐことにする。立ったままレインパンツをはく。

・75km 深夜の幹線道路から湖岸道路に戻ってきた。月はすでに西に傾いているが、それが湖面に映って美しい。きょうは月齢11。幹線道路から瀬田川河畔の遊歩道に移るところでコンビニに立寄り、温かいはちみつレモンを購入。おいしいけど甘すぎる。
このあたり、各大学ボート部の艇庫が並んでいるのですね。河畔の遊歩道は、昼間なら気分のよい道なのだろうが、街灯もなく真っ暗なので、橋をくぐるときなど、ちょっと気持ちが悪い(というか、遊歩道と川のあいだに柵がないので、歩きながら眠っていると落ちそうでこわい)。水鳥がもぐるときの音が、人が飛び込んだように聞こえてびっくりしたり。草むらの虫の声がさかん。

・80km なかなか見えてこなかった第4チェックポイントに到達。午前2時の計時開始に遅れること40分。第3CPから第4CPまでの10kmに2時間15分を要していることから、1km12分ペースを維持できていないことがわかり、この時点で、午前6時のゴールは不可能であることがほぼ確定。CPでいただいたお煎餅がとてもおいしい。スタート以来甘いものばかり食べているので、塩気の効いたものがおいしく感じられる。

・85km 南郷洗堰を渡り、瀬田川左岸を北上。依然として河畔の真っ暗な遊歩道。対岸を第4CPに向かって南下している出場者のヘッドランプが、蛍の列のように見える。つらいのは自分だけではない…という奇妙な連帯感。
近江大橋(87.1km)や琵琶湖大津プリンスホテル(88.4km)の灯火が遠くから見えるのだけど、なかなか近づいてこない(∵目標物が大きい上に、こちらが遅いから)。遠近感がよくわからない上に眠い。後方から自分を見たら、多分よたよたしていることだろう。自販機で暖かいほうじ茶を買ったが、小銭を避けるためにせっかく用意したICカードが使えず、大量のつり銭で荷物が重くなってしまった。
このあたりから、早朝の散歩やランニングをされる姿が現れはじめる。大津市街を徘徊するオートバイの音がうるさい。


・90km 瀬田川沿いの遊歩道から市道に戻り、第5チェックポイント。計時開始から1時間17分。温風ヒーターの大きなやつ(あれは何という名前なのだろう)が出す熱風にあたり、靴と足を乾かす。左足小指と右足親指にしびれるような違和感があるが、歩けないほどの痛みではない。チェックポイントを出ると、びわ湖の対岸、東側の山々がうっすらと明るんできたのが見える。

・95km びわ湖ホテルの角を曲がり、堅田や高島方面への幹線道路に沿って、すっかり明るくなった大津市街を北へ歩く。高層ビルが立ち並ぶ中心部から少し歩くと、すぐに郊外に出てしまう感じ。歩幅はもはや30センチぐらいと思われ、ここが頑張りどころなのだが、さらに腰とか胸も痛くなってきたため、このまま全力で前進していった場合、あす仕事にならない惧れ(=最悪シナリオ)があることから、午前7時台のゴールはあきらめる判断をして、ゆっくり歩くとともに、95キロのエイドステーションで長時間休憩。スタッフの方々と話をしながら、お煎餅をいただく。日がさして暖かくなってきたので、上下ともレインウェアをバックパックに戻し、スタート時の格好に戻る。みなさんに「あと5キロですから」と励まされて出発。

・97km コース中最大の高低差ともいえる歩道橋を渡る。ふだんなら何でもないような階段が、絶望的な高さに見える。1段ずつ上るのが大変つらいが、下りは意外に簡単で、脚がもつれることもなかった。しかし、これで最後の体力を使い果たしたらしく、そのあとの数キロがとてつもなく長く感じる。道の右側の電柱に、大会本部が出した「あと2キロ」や「あと1キロ」の小さな貼紙が見え、最後の力を振りしぼる。
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・101km 生活道路から幹線道路に戻り、ふたたび延々と歩く。やがて信号を渡ると、ゴール地点の公園が見えてくる。公園の入り口にある階段、ほんの数段の階段をストックの助けで上り、スタッフと握手してゴール。事務局の方から完歩証を受け取って、自分にとっての大会はこれで終了。食べ物の販売もあるのだが、5kmごとに行動食を詰め込んできたため、消化管が正常に機能しなくなっている感じ。

ゴール地点に陣取って、次々に完歩される方に拍手を送り続けたいところだが、時間の制約もあり、公園の前を通る路線バスに乗って浜大津まで戻る。帰りの新幹線が東京に着くのがちょうど16時ごろ、この時間まだゴールが続いているのか…と複雑な気分。

(③感想・分析編に続く)

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