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シャイニング丸の内氏はなぜ誤ったか [雑感]

(いきなり引用)
shimaru365.png
(引用終わり)

いささか旧聞に属する論争のきっかけは、このツィートだった。
ギャグでも炎上芸でもなく、大まじめと受け取れる投稿ぶりだったので、多くの反響があった。
反響の一例として、以下のものを引用して紹介する。

〔勉強したい人が選択すればいいんじゃないの、という賛同(高橋雄一郎氏)〕
(以下引用)
高橋雄一郎 @kamatatylaw 話題の古文漢文不要論だけど、講義時間や必修選択の別といった中高カリキュラム編成の問題に過ぎないのに、学問価値優劣論や文系理系相互の蔑視感情やコンプレックスが交錯して冷静な議論から逸脱する傾向があるよね。 7:18 - 2018年2月22日 教養にも若いうちに強制的に教えこまなければならない教養(甲)と、学びたい人が必要性に応じて学べれば足りる教養(乙)があって、古文漢文はどちらかという問題ではないか? 15:29 - 2018年2月21日 若いうちに強制的に教えこまなければならない教養(甲)はパターナリズムを根拠とする。善悪の別や行動原理、忍耐力、キレない心と折れない心、健康管理、性教育、読み書き計算、柔道の受け身、自転車の運転、水泳、逆上がりぐらいではないか。 15:24 - 2018年2月21日 (以上引用終わり)

〔漠然とした教養としてではなく、漢文も日本語の基礎だからビジネスシーンで実利的に役に立つのだ、という反論(安田峰俊氏)〕
(以下引用)
本記事ではあえて、「現代日本の日常生活およびビジネスシーンで有用」「効率性の向上やカネ稼ぎにつながる」という実利的視点のみから、漢文や中国古典の基礎的な知識を持つことのメリットを論じてみることにしたい。 (1) SNSの投稿やショートメッセージがスマートになる (2)情報伝達コストを下げられる (3)法的リスクへの対応力を強化できる (4)海外の偉い人に接する際の売り込みツールとして威力を発揮する的リスクへの対応力を強化できる 日本語の基礎には漢文と漢文法が深く食い込んでおり、一般的な日本人の教養のベースの一部には中国古典が存在する。その先に広がる「応用」の知識を取りこぼしなく身につける地ならしとして、基礎として学んだほうがいいものなのだ。
(以上引用終わり)

この議論の難しいところは、ここでいう「教養」とは何か、またそれが、「仕事で役に立つ」とはどういう意味なのかがきちんと定義されていないので、主張と主張がきちんと噛み合わないことにある。
そうではあるが、もともとのtweetは、「高等学校の他の科目と比べて古文漢文の重要性が低い」という趣旨と思われるので、これに反論するにあたっては、仮にこのtweetが根拠薄弱な感想のようなものであったとしても、一応根拠を示して反論することが望ましいわけで、シャイニング氏に馬鹿というレッテルを貼って終わりにするのは、あまり感心しない。

そこで、あえて正面切って「漢文や古文も他の科目と同様に重要なもので、仕事にも大いに役に立つのだ。」という説明をしてみたい。つまり、上記安田氏と結論においては同じになるわけだが、理由を別の角度から提起してみる。

古文漢文は仕事の役に立つか。役に立つ。理由は以下のとおり。

仕事にはいろいろな分類があるけれど、職種とか業種とかの分類でなく、どんな職種や業種でも、「前例のない問題に対処しなければならない」という仕事があるはずだ。

仕事の困難度って簡単には測定できないし、ノルマがきついとか納期が短いとか、そういう困難もいろいろあるのだけれど、やはり「先例がない、かつて経験したことのない問いに、答えを出さなければならない」というような仕事は、まず難しいものといって差し支えないだろう。
例えば、
 ・貨幣の時間的価値はマイナスになりうるか
 ・これまでになかった取引形態(例えばストックオプションとか)の仕訳をどう切るのか
 ・自動運転の車が起こした事故の責任はどこにあるのか
 ・尊属殺重罰規定は法の下の平等に反するか
などなど。

そのような問いには、あらかじめ決まった答えがなく、先例もなく、個別の知識が単品では役に立たない。
そんなとき、どうやって答えを導いていくかというと、もっと漠然とした、さまざまなジャンルのことがらの中から、過去の人々が、どんな状況でどんなことを考えていたのかを通じて、「真善美」のような漠然とした尺度を抽出し、それを参考に―その尺度もまた絶対ではないので、あくまで参考に―して、答えを導いていくしかないと思われる。

で、古典文学というのは、数百年とか数千年にわたって、人々から一定の支持を得てきた思想や感情の表現であるわけだから、真善美のような尺度を各自が心のなかで作り上げていく上で、控えめに言っても有用な、もっといえば不可欠なものではないだろうか。

そうすると、古典文学を学ぶことは、結局のところ、どこかで上記のような難しい問いに直面したときに、答えを導く助け(のベース)として、一定程度有用といえるのではないか(古典文学だけが有用だと言っているのではないので念のため)。
古典文学と似たような例として、オーウェルの「1984年」とか、事件でいえば南海泡沫事件やチューリップ球根事件なんかも、尺度を作り上げていく上で有用だけれど、こちらはもっと直接的に「会計監査の意義」とか「公文書改ざん」についての考え方を提供してくれる。

いずれにせよ、これらは、知っているといないでは対応に大きな違いが出てくるだろう。以上のことから、古文や漢文など「古典」と呼ばれるものは、試験に出る出ないにかかわらず、困難度の高い問いに対処するために必要なものだと結論づけることが可能だ。


傍証として、ちょっと違う角度から、「前例のない状態に置かれた人間が、古典文学やこれに類似したものを学ぼうとした」実例を挙げてみたい。

一つは、ジョゼフ・チャプスキ『収容所のプルースト』(岩津航訳、エディトリアル・リパブリカ、2018)に描かれた、旧ソ連にあったポーランド兵収容所で行われた講義の模様である。
収容されていたポーランド軍将校は、それぞれに「書物の歴史」「イギリスの歴史」「建築の歴史」「南米について」「プルーストについて」といったテーマを持ち寄って、講義を行ったという。
(以下引用)
「いまでも思い出すのは、マルクス、エンゲルス、レーニンの肖像画の下につめかけた仲間たちが、零下四十五度にまで達する寒さの中での労働のあと、疲れきった顔をしながらも、そのときわたしたちが生きていた現実とはあまりにもかけ離れたテーマについて、耳を傾けている姿である。」(pp.16-7) 「わたしたちにはまだ思考し、そのときの状況と何の関係もない精神的な事柄に反応することができる、と証明してくれるような知的努力に従事するのは、ひとつの喜びであり、それは元修道院の食堂で過ごした奇妙な野外授業のあいだ、わたしたちには永遠に失われてしまったと思われた世界を生き直したあの時間を、薔薇色に染めてくれた。  シベリアと北極圏の境界線の辺りに跡形もなく消え失せた一万五千人の仲間のうち、なぜわたしたち四百人の将校と兵士だけが救われたのかは、まったく理解できない。この悲しい背景の上に置くと、プルーストやドラクロワの記憶とともに過ごした時間は、このうえなく幸福な時間に見えてくる。」(pp.17-8)
(以上引用終わり)

もう一つは、山崎正和『文明の構図』(文藝春秋、1997)に描かれた、「敗戦後の旧満州の中学校の暗い仮設教室」で行われていた授業の様子である(原典を入手できず、鷲田清一「京都の平熱」(講談社学術文庫、2013)からの孫引きとなることを許されたい)。
(以下引用)
外は零下二十度という風土のなか、倉庫を改造した校舎は窓ガラスもなく、不ぞろいの机と椅子しかない。(…)引き揚げが進み、生徒数も日に日に減るなかで、教員免許ももたない技術者や、ときには大学教授が、毎日、マルティン・ルターの伝記を語り聞かせたり、中国語の詩(漢文ではない)を教えたり、小学唱歌しか知らない少年たちに古びた蓄音機でラヴェルの「水の戯れ」やドヴォルザークの「新世界」のレコードを聴かせた。そこには、「ほとんど死にもの狂いの動機が秘められていた。なにかを教えなければ、目の前の少年たちは人間の尊厳を失うだろうし、文化としての日本人の系譜が息絶えるだろう。そう思ったおとなたちは、ただ自分ひとりの権威において、知る限りのすべてを語り継がないではいられなかった。」(p.157) (以上引用終わり)

ここで「中国語の詩」についてわざわざ「漢文ではない」と補足されているのは、戦前の学校教育との違いを強調する趣旨なのか判然としないが、ともかくこれらの実例は、前例がなく明日死ぬかもしれないという状況で、そのような極限状況を受け止める(受容するにせよ、反発するにせよ)ときに必要なものは、むしろ古文や漢文のような学問であることを示しているのではないか。

以上のようなことから、古文漢文は他の教科と並んで、遅くとも高校までに学んでおくべき価値のひとつ(高橋雄一郎氏の分類に従えば「教養(甲)」)であると考えるものである。

最後に冒頭の問いに戻って、シャイニング丸の内氏がなぜ誤ったか(つまり、なぜ、高等学校で古文や漢文を学習する必要がないと感じてしまったか)といえば、それは、氏がこれまで、残念ながらその程度の仕事、つまり一つの問いに対して一つの答えを用意すればいい程度の仕事しかしてこなかったから、ではないだろうか。


(7.11追記)
藪柑子の通っていた高校には当時、1年間かけて「徒然草」を1段ずつ順番に読んでいく授業(必修だったか選択だったかは覚えていない)があって、3年間のなかでも指折り数えられるぐらい印象に残る授業だった。当時副読本に使っていた安良岡幸作「徒然草全注釈」上・下(角川書店、1967)は、就職して実家から出るときに荷物に入れ、その後何度も何度も引越しをした末に、今も本棚にささっている。
何が言いたいかというと、少なくとも自分が職業人として生きていく上で背骨となるぐらいの影響を、たった一つの作品からだけでも受けたということであり、かつ、それは高校の授業できちんと読み込むことではじめてそうなったのだということだ。シャイニング丸の内氏にそうした古典との出会いがなかったとすれば、上記のような「現在従事している仕事の内容や程度」もさることながら、その感受性や理解力(少なくとも、高校時代の感受性や理解力)についても疑問が浮かぶところであるが、それはこの稿の本題ではないので省略する。


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OS復活 [雑感]

日本路線から去年撤退したOS(オーストリア航空)が、来年5月からウィーン・成田間で運航を再開するとのこと。
去年の撤退劇の衝撃はまだ記憶に新しいし、各社の相対的な日本離れの構図自体は変わっていないのだろうが、そうした中にあってこれはささやかな朗報。

 

イギリス人が誇るもの [雑感]

イギリスの大手調査会社Ipsos MORIが7月26-29日(=国民投票の約1カ月後)に成人1,099人にインタビューした調査結果が、いかにもイギリスらしくて面白い。

https://www.ipsos-mori.com/researchpublications/researcharchive/3776/Six-in-ten-prefer-to-be-British-than-of-any-country-on-earth.aspx

最初の質問は、「イギリスのよいと思う点、悪いと思う点は何か」というもので、これに対する答は、
よいと思う点としては、
1) ユーモアのセンス(47%)
2) 礼儀正しさ(40%)
3) 異なる社会集団への寛容さ(27%)
4) 愛国心(26%)
5) フレンドリー(25%)
の順にあげられている。半分近い人が「自分たちにはユーモアのセンスがある」と考えているのですね。まぁ確かに、イギリスのユーモアってじわっとくる何かがあることは確かだと思う。嫌味を言うときなんかにもね。2位が礼儀正しさ…金融業のみなさんの行状は礼儀正しくないけど、行列をきちんと守るところとかはそうですね。"Is this the end of queue?"っていう質問をイギリス以外で聞いたことないもんな。

逆に悪いと思う点としては
1) 酒を飲みすぎること(42%)
2) 他の文化に対する無関心(37%)
3) 文句を言いすぎること(27%)
4) 異なる社会集団への不寛容さ(22%)
5) 怠惰(19%)
の順にあげられていて、長所の3)と短所の4)が同じことがらなのが面白い。同じ状況について、それぞれ4分の1ぐらいの人が逆の評価をしているわけですね(それにしても、5位の「怠惰」ってなんなんだ…)。

それよりなにより驚いたのは、その次の「イギリス人として最も誇りに思うものは何か」に対する回答で、歴史とか王室とか英語とか海軍とか株式会社(のしくみ)なんかが直感的に予想されるところ、第1位に挙げられたのは、
1) The NHS(48%)
だったこと。しかも48%って、イギリス人の半数近いではないですか。
ちなみにOur historyは2位(44%)、The Royal Familyは3位(29%…思ったほど支持されてない)で、これらを抑えて堂々の第1位なわけなので、Brexit直前のプロパガンダ合戦でNHSが取りざたされていた点を差し引いても、この見識は大したもの。爪の垢を煎じて、アメリカの某大統領候補者とか日本の某炎上芸人に飲ませたいところ。

なお、The free press/mediaが7位(14%)、The BBC(13%)が8位に入っていることも、イギリス人らしいなあと思う。こういう嬉しいことがあるので、イギリスおたくをやめられない。



OS撤退 [雑感]

OS(オーストリア航空)が日本から撤退。
長い間運航を続け、サービスの品質も高く、日本からウィーンやザルツブルグを訪ねようとする人にとっては、ファーストチョイスとして挙げられる航空会社だっただけに残念。
撤退の理由は何なのでしょう。採算がとれないとすると、オーストリア側に、あまり日本へ出かける需要がないのですかね。それとも、もっと利益をあげられる就航先に振り向けられたということなのですかね。

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やぶろぐ10周年(8/1) [雑感]

2006年8月1日に最初の記事「大試験」と「日盛会(第2回=炎天)」をアップしてからちょうど10年。この間にアップした記事の数は737本。

あらためて読み返してみると、日盛会のほうはつい昨日のことのように思い出されるのに、大試験(特に、初受験だった2006年の大試験)は遠い昔のことのように思われる不思議。

 

Brexit [雑感]

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残念。

じゃあこの際、かわりに日本がEUに加盟してはどうかと(違)

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(7.7追記)
反応としていちばん共感できたのは、Celesteさんとおっしゃる研究者のtweetで、ふだんはノルウェーに住んでいるところ、この日はたまたま学会でロンドンにおられたらしい。以下引用。
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国際学会で英国人のプレゼンがあるたび「今日のような輝かしい…とは言い難い日に発表させて頂き、大変光栄です」とみな暗い前置きを入れてくるのだが、たぶん本当にちょっと凹んでいるっぽいのにこんな時も自虐ギャグを入れてくるあたりが英国人らしくて好感が持てる。
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以上引用終わり。この感じよくわかります。


いいにほひ [雑感]

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おろしたての綿のドレスシャツ(俗にいうワイシャツ)って、いいにおいがしますね。それも、ブロード地よりもオックスフォード地の柔らかくてざっくりした(つまり、番手の小さい綿糸で織られた)生地なんかが最高。
このにおい、クリーニングに出しても再現しないので、もともとのコットンの生地のにおいなんだろうか?
柔軟剤を使えばこういうにおいが再現するなら、その柔軟剤を買ってきて一も二もなく使うのだけど。

  

参画? [雑感]

いきなり日本経済新聞から引用。
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政府、「一億総活躍相」の英語表記決定

 政府は改造内閣で新設した「一億総活躍相」の英語表記を「Minister in Charge of Promoting Dynamic Engagement of All Citizens」とした。これを日本語に直訳すれば「全ての国民の精力的な参画の促進を担当する閣僚」になる。外国人には日本の人口規模が伝わりにくいため、英語表記では「一億人」を省いた。

(日本経済新聞 10月12日朝刊)
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Engagementって、参画なら参画でいいのだけど、目的語をとらなくてもいいんだっけ?
つまりその、「何に」ダイナミックに参画するのか不明でも、英語表現として成り立つのかなあ…
他の言語に訳してみると、元の言語における意味不明ぶりがよくわかるような気が…
  

祝・カフエマメヒコ10周年(7/1) [雑感]

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(「10周年記念ブレンド」のパッケージ)


いつもお世話になっているカフエ「マメヒコ」の三軒茶屋店が開業10周年。おめでとうございます。

6月30日の「10周年記念パーティー」には、札幌菊地珈琲の菊地さん、クルミドコーヒーの影山さんなど、マメヒコの屋台骨に関わるみなさんと、かつての店長さんはじめOG/OBの懐かしい姿が。本当にお世話になりました。そしてなぜか、Part3でとんかつを揚げていたEさんも(えー!)…
初めて拝見する顧問会計士さんの口癖が「社長、残高わかってますか…?」だという紹介が、職業会計人的にはたまらなくおかしい。

会場の一角に静かに置かれている「Sさん」という名前の人形(オブジェ)は、今は遠くへ行かれている能楽師Sさんの「代理」なのだけど、それをこのパーティーに運んできて、会場を見渡せる場所にさりげなく置いておく、そのメンタリティは訓練やマニュアルとは無縁の、いかにもマメヒコらしい気配りで、本日いちばんありがたく感じたことだった。

10年といっても、自分が知っているのは2007年秋以降のおよそ7年10か月でしかないのだけど、その間に繰り出されたかずかずのトライアルを思い返すと、よくもまあと思うほど次々に新しいことに挑戦してきた、その「挑戦しつづける姿勢」こそ、このカフェの真骨頂なのだと思う。察するに、損得じゃないところで「やむにやまれぬ思い」から実現させているいろいろなことがあるということだろう。そのボールを全部受け止められるわけではないのだけど、共感できるものは末席に連ねていただいて、拍手をしたりお手伝いをしたりすることができるのは幸せなことだと思う。

また、静かで清潔な環境(いつも清潔を保つために、目立たないところで大変な努力をされていると思う)でおいしいお茶を出し、適度で控えめに声をかけてくださることから、自分にとって代替不可能な、貴重な場所であることは昔も今も変わりはない。

みなさんには「20周年を楽しみにしています」と声をかけて帰ってきたけど、いちばん苦しい時期にさりげなく支えてくれたこのカフエが、引き続き繁盛してくれることを切に願う。

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(参加者全員で「フニクリ・フニクラ」を熱唱)

 

ラフロイグ蒸留所200周年 [雑感]

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アイラ島の南海岸にあるラフロイグ蒸留所がどんな場所であるかについてはすでに多くの本が書かれ、また実際にウイスキーを味わうこともできるので、それ以上の説明は不要であろう。ここでは特に、この蒸留所がファンに向けて開設したウェブサイト(Friends of Laphroaigという)で述べている蒸留所の運営理念の一節を、さまざまな働きかたという観点から引用しておきたい。

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"There are 3 main ingredients for making Laphroaig — Barley, Water, and Yeast, but the secret ingredient is the People."

Laphroaig (La-froyg) is the story of a community. An uncompromising, tough and determined group of people who work to ensure that this defining whisky has over 200 years, remained true to its origins.

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アイラ島は小さな離島で、島に住むひとびとの大半は何らかの形でウイスキーづくりにかかわっている。だから、8つある蒸留所のどれかを訪ねると、次の日に他の蒸留所へ行って「きのう○○蒸留所に来てたでしょ」とか言われて面食らったりするのだけど、そういう小さなコミュニティで、長い時間をかけてつくられる製品にふさわしい、粘り強く地道な働き方も、またイギリス社会の一端であること(それも、比較的広く支持されている一端であること)を気にとめておきたい。

 

降臨節第4主日 降誕日礼拝(12/21) [雑感]

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英国国教会のクリスマス礼拝ってどんなものだろうと思っていたのだけれど、日曜日の朝に礼拝があるのですね。こういう時間なので、むろんまわりは信者さんばかり。

司祭の説教のなかで、イエスがベツレヘムの「馬小屋で」生まれたことの意味について司祭がお考えになったこと、というお話があって、なるほどと思う。住民登録のために故郷ベツレヘムへ戻ったヨセフは、なぜ馬小屋に滞在しなければならなかったのか、つまり、既に実家がなかったとしても、遠縁の親戚ぐらいいくらでもいたはずなのに、なぜどの家からも受け入れてもらえなかったのか、ということなのだけど。
また、ご自身が駅の階段を踏みはずしてホームまで転げ落ちた事故の経験を話された。ホームに横になってみると、人の顔が上に見え、そのはるか彼方に青い空が見えたのだけど、そのとき、馬小屋のかいば桶の底から見た風景もこういうものであろうと思い、当世風の「上から目線」とは逆に、イエスの生涯は「すべてのものを下から見ていく視点」ではじまったことに気付いたとのこと。

なるほどなるほどと思っているうちに、聖歌82番(神の御子は今宵しも、として知られる曲ですね)をみなさんで歌って終了。また見学させていただきたい聖餐式でした。



バターがない [雑感]

バターがない。本当に店頭にないんです。
牛乳もチーズもあるのに、いちばん長期保存のきくはずのバターがないんです。
道楽でスコーンやシュトーレン焼く程度の自分は、せいぜい残念がっていればいいのだけど、お菓子やパン作りを生業にされている方にとっては、深刻な事態ではないかと。

国内の酪農は(農水省のご意向で)ひたすら大規模化をめざしてきたのだけど、円安による飼料価格と燃料価格の高騰に直撃された感じ。なにしろ大規模専業なので、他のセグメントにコストをまぶしておくわけにもいかないわけで。
ちょっと見過ごせないのは、その農水省が行った調査結果。

(以下NHK NEWS WEBから(11月19日)から引用)

農林水産省の調査でも、大規模酪農家が苦境に陥っている現状が明らかになっています。
規模を拡大するとある程度まではコスト削減効果が現れますが、牛の数が80頭を超えるまで大きくなると、むしろエサ代や人件費などのコストの上昇が削減効果を上回ってしまうことが分かりました。

(以上引用終了)

今さらそんな…調査を実施した農林水産省様としては、今後どうなさるのかと小一時間。

Scottish referendum [雑感]

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イギリスおたくのはしくれとして、どちらの言い分にも理があるように思え、かつ、ここに至る経緯や当事者の心情にも共感できる。こういうことは珍しいのだが。
結果はどうあれ、考えがいのある一件。

なお、この件を損得勘定というモノサシで論評するのは、いささか的外れであるように思われる。

(参考)councilごとの開票結果判明時間(いずれも現地時間) *BBCによる

Comhairle nan Eilean Siar - 02:00
(There were concerns this may be delayed as fog was causing problems at Stornoway airport earlier but ballot boxes from Uist and Barra were able to take off)
North Lanarkshire - 02:00
Inverclyde - 02:00
Orkney - 02:00
East Lothian - 02:00
Perth & Kinross- 02:00
Moray - 02:00
Clackmannanshire - 02:30
West Dunbartonshire - 03:00
Dumfries & Galloway - 03:00
Angus - 03:00
South Lanarkshire - 03:00
East Renfrewshire - 03:00
Dundee - 03:00
Falkirk - 03:00
Renfrewshire - 03:00
East Ayrshire - 03:00
Aberdeenshire - 03:00
Stirling - 03:00
Midlothian - 03:30
Argyll & Bute - 03:30
West Lothian - 03:30
South Ayrshire - 03:30
Shetland - 03:30
East Dunbartonshire - 03:30
Fife - 04:00
Highland - 04:00
North Ayrshire - 04:30
Scottish Borders - 05:00
Edinburgh - 05:00
Glasgow - 05:00
Aberdeen - 06:00


黒百合ヒュッテ [雑感]

麦草峠から南へ向かう登山道は、ずっと曇り空と霧。北八ヶ岳らしい、苔と石と茸の道が楽しい。
途中の高見石小屋で腹ごしらえをしながら様子を見るが、どんどん霧が濃くなるのでとっとと出発。

App Storeで購入したiPhoneの「DIY-GPS」というアプリケーションを試してみる。あらかじめ本体に地形図を読みこませておけば、携帯圏外でもGPSの電波を拾って現在位置を表示してくれるのがミソ。1:25000図との誤差は50mもない。また5分おきに時刻と標高を音声で読み上げてくれる(この読み上げ間隔は5~30分の間で調整でき、オフにすることもできる)ので便利。ただ、バッテリーの減りが早いのが玉にキズ。

やがて霧の中に見えてきた黒百合ヒュッテの横の空き地では、バイトさんが総出で薪を積み上げている。めいめいが背負子に積んでいる薪の量がすごい。山の冬支度。

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着いたとたんに雨が降り出し、遠くの景色は何も見えないがまずは快適快適。ストーブにあたり、ゆっくりお茶をいただく。
山の上は、本を読むには向かない(明るい照明がないし、20時消灯)けれど、電話もメールもこないので、のんびりするには最高。

エムヒコトークイベント「カフェと編集者と漫画家の景色」 [雑感]

クリエーターのエージェント会社「コルク」の佐渡島庸平社長とマメヒコ井川啓央社長、そして漫画家でありながらそのコルクに雇用されている羽賀翔一さんが語り合うという企画なのだけど、きょうは佐渡島さんの都合がつかず、新入社員の矢代さんがかわりに登場。この矢代さんが新入社員らしからぬ役者で、感服する。自分が新入社員のころ(なんて遠い昔だが)、あんな芸当は思いもよらなかった。

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イベントの模様は、おそらく権利の問題もあろうと思うので、羽賀さん描くところの「今日のコルク カフェマメヒコ編」で想像していただくのがよいかと。フェイスブックのアカウントをお持ちの方は、「コルク」の頁をフォローされると面白いのでは。

印象に残ったのは、講談社の新人賞に応募した羽賀さんが、絵はド下手だったにもかかわらず、なぜ佐渡島さんに見いだされたかというエピソードで、そういう眼力(しかしきわめて論理的な理由)こそが編集者の仕事のコアなのかもしれない。

PartⅢ時代以来久しぶりにカツサンドをいただく。おいしい。

ストーン再び [雑感]

吉祥寺駅の公園口すぐ横にあった喫茶店「ストーン」が閉店して数年になる。店のあった場所はビルごと取り壊され、駅の通路にされてしまった。夜遅くまでおいしいサンドイッチと紅茶がいただける店だっただけに残念だったが、つい数か月前「ティークリッパー」のご店主にその話をしたところ、姉妹店が中道通りにあると教えられた。地元の方にとっては周知の事実だったのかもしれないが、さっそく訪ねてみる。

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メニューも店の雰囲気も、ストーンの面影をよくとどめている。ついでにレジの横には、ストーン時代の写真集も。
よほど勇気がないと入れない風変わりな店は別として、誰でも気軽に入れるこうした「町の喫茶店」は、いわば町の財産なので、それが繁盛するかどうかは、その町の底力または成熟度をあらわしているようにも思う。

(6.12追記 姉妹店の名は「ラ・クール・カフェ」、ビルの2階にある。)

駅からの道順 [雑感]

お葬式に参列するため、秋田県へ日帰り。

あらかじめ駅から会場までの道順を調べようと葬儀社のウェブページを見てみたが、車で来る道順(国道何号線をどこでどう曲がってとか)は書かれているのに、電車はといえば、最寄り駅の名前すら書かれていない。しかし地図で見る限り、奥羽線の駅から15分もあれば歩けそうな距離なので、とりあえず行ってみることにする。

いざ駅についてみると、人影もまばらで、委託された係員の方が朝から夕方までいるそうだけど、まあ静まり返っている。駅前にはタクシー乗り場どころか商店のひとつもない。むろん道案内の看板とか会葬案内の札を持っている人なんかどこにも見当たらないので、きのう地図で見当をつけたとおりに歩いていく。途中に寿司屋と地方銀行の支店と郵便局、それにヤマザキストアーが1軒あるが、日曜日なのでどれも閉まっている。営業していたのは酒屋が1軒と犬のサロンが1軒。しかしどの庭にも花蘇芳やつつじが咲き乱れるきれいな村であった。やがて集落のはずれを土手で走っている国道にのぼると、その国道に面した巨大な敷地に、いずれもできたばかりのニトリとイオンとユニクロとアオキに囲まれるようにして、これまた今出来の葬儀場が見えてくる。参列者の99%は車で来て車で帰るのだろう。

駅まで戻り、帰りの電車を待っていると、もう1人だけ、ご高齢の参列者が窓口できっぷを買っていて、係員の方と秋田弁(と思われる)でなにかしゃべっている。しかしこれが半分ぐらいしか聴き取れない。駅の跨線橋に張り紙がしてある。3行目の「試して見るまでもありません」が、命令でも懇願でもなく、何ともいい感じ。この1行で、なんだか秋田へ来てよかったという気がするから不思議。
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「人気の島トップ10」 [雑感]

トリップアドバイザーというウェブサイトを運営している会社から送られてきたeメールに
「人気の島トップ10-世界」
とあるので、
「?」と思いながらページへ移ってみると、
「何千万件もの口コミから、最高の場所が見つかります」とあって、こんなランキングが載っている。
http://www.tripadvisor.jp/TravelersChoice-Islands-g1

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1位 アンバーグリスキー(ベリーズ)
2位 プロビデンシアレス島(タークス&カイコス)
3位 ボラボラ島(仏領ポリネシア)
4位 マルコ島(米国)
5位 ルイス&ハリス島(スコットランド)
6位 ナクソス島(ギリシャ)
7位 アイツタキ島(クック諸島)
8位 ノシベ(マダガスカル)
9位 イースター島(チリ)
10位 タオ島(タイ)

プロモーション目当てのランキングって冗談のようなものなので、あまり真に受けて反応するのも大人げないのだけど、さすがにこれはないでしょ。

まず、何の尺度で「人気の島」なのか不明だということ。「20代のハネムーナーに人気の、ゆっくりできるビーチリゾート」とか「経験豊かなダイバーに人気の、ダイビングスポット」「歴史好きな高齢のご夫婦に人気の、世界遺産に登録されている旧市街がある島」とかモノサシをはっきり示さないと、牛丼とカルパッチョではどちらが上位になるでしょう、みたいな妙ちくりんな話になってしまう。「節税に余念のない多国籍企業に人気の島」だったら、英領バージン諸島とかケイマン諸島とかガーンジー島とかw……トリップアドバイザーなのでそれはないか。

次に、尺度を例えば「経験豊かなダイバーに人気」に固定したら、今回の回答者はどんな属性の「経験豊かなダイバー」なのかを示さないと、世界中のベテランダイバーから無作為抽出したという誤解を与えてしまう。このランキングでは1・2位がカリブ海で5位にフロリダ州の島が入っているところから、アメリカ東海岸在住者が多いのかなぁとも思う。しかしマルコ島って、googleで見るとこんなところなんですけど…

https://maps.google.com/maps?hl=ja&q=marco+island+florida&ie=UTF-8&ei=V-IKU72KOIuGkgWOqoCIDQ&ved=0CAcQ_AUoAQ

これなら江の島のほうがずっと楽しそう。このランキングで行ってもいいと思うのは、5位のルイス&ハリス島、6位のナクソス島、9位のイースター島ぐらいかな。

じゃあお前がベスト10を選ぶならどうなんだと言われそうなので書いておくと、半分以上は「行ったことないけど行ってみたい島」であることをお許しいただけば、以下のとおり(日本国内の島を除く)。「くたびれた中年の酒好きバックパッカーが行ってみたい島ベスト10」である。

1位 アイラ島(スコットランド)
2位 スピッツベルゲン島(ノルウェー)
3位 フォークランド諸島(イギリス)
4位 アゾレス諸島(ポルトガル)
5位 サンピエール島&ミクロン島(フランス海外県)
6位 ウェストマン島(アイスランド)
7位 オーランド諸島(フィンランド自治領)
8位 キプロス島(キプロス)
9位 ジュラ島(スコットランド) 
10位 ザンジバル島(タンザニア)

まあそれはともかく、この手のランキングを見るたびに毎度鼻白むというかうんざりするのは、比較しようのないものを無理やり比較して、消費や虚栄をあおる意図が透けて見えること。
「ワンランク上の○○」とか
「町でいちばんの○○」とか、
感じわるい上に、表現自体が既に手あかのついた感じだし、大概にしてほしい。

もっとも、そういう手あかというか先入観を逆手にとって
「ワンランク上の罰ゲーム」とか
「町でいちばんのゴミ屋敷」とか 
そういうプレゼンをしてくれるなら面白いなぁと思うのだけど(←何言ってんだか)。





クリーム豆カン [雑感]

焼きりんごに続いて、これまた「マメヒコ」の名物である「豆カン」をいただく。

豆と寒天にシロップをかけたものだが、その豆が「黒豆」「紫花豆」「金時豆」といろいろあって、しかもその豆はカフエのスタッフが北海道に住み込んで自ら栽培しているという手間ヒマのかかった(これは重要)デザート。こういうおやつは、他のカフェや甘味喫茶でいただくとケミカルに甘いシロップがかかっていたりするのだけど、これは煮た豆の甘みが全体に行き渡っていて、きび砂糖のシロップと寒天との相性がすばらしい。

さらにその上に乗せたアイスクリームをスプーンで混ぜながら、煮豆と寒天をいっしょにいただく。美味。
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傘の修繕 [雑感]

1本しかない雨傘(もう1本、登山用の折りたたみがあるけど)の、巻いて止めるゴムひもがのびてしまい、常時半開きになってしまった。専門の工房へ修繕に出しに行く。不思議な修繕道具やパーツがいっぱいの店内。

職人さんに「石突きもずいぶんすり減っているけど、何年ぐらい使っていますか?」と尋ねられたので、
「1985年に買ったので、もうすぐ30年ですね。」と答えると、「30年ずっと使っているの?」と驚いた様子。
「そうですね、この後も何本か買ったんですが、失くしたり(2本)、風で壊してしまったり(1本)で、結局一番古いのを使い続けています。」と説明すると、「へぇー…ゴムは老化するので仕方ないよね。同じようなゴムがないかもしれないので、そのときは同じ色の布に換えてもいいですか?」とのこと。どうぞどうぞ。

一か月折りたたみ傘ですごし、出来上がってきた傘を見ると、あまりテンションが強くならないように(=ゴムが強く引っ張られて生地を傷めないように)、やや弱めに張られている。また、ゴム自体もぴかぴかの新品然としたものでなく、適度に古色(?)があり、古びた生地とのちぐはぐさを感じさせない。専門家の仕事ですね。
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