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Coast to Coast Walk (第5日:Patterdale→Shap) [ウォーキング]

 一昨日と同様,稜線に向かってゆっくり高度を上げていく。稜線上に小さな湖があったりして,焼額山を思わせる風景。そんな高所でも放牧地を区切る境界の石積みはしっかり作られていて,万里の長城さながらに山全体を網の目のように覆っている。ところどころでその石積みを乗り越えて登り続ける。
 Kidsney Pikeへの登りで団体を追い抜くと,2人と1匹を前方に発見。やがて追いついて一緒に歩く。しかし最後の稜線からピークへ入り込む分岐を間違えて道連れにしてしまい,迷惑をかけてしまった。
 Kidsney Pikeからの下りは,最初のうちこそゆったりした眺めのよい道だったが,途中から鉄砲下り。また2人においていかれる。
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 下りで膝を痛めないようストックを使うことに意識を集中させているうちに,いつのまにか地図(を入れたZiploc)を落としてしまった。まあこの先は地図がなくても,なんとなく貯水池に沿って歩けばいいだろう…と思っていたら,後からきたパーティーが拾ってくれた。ありがたや。

 Hawswater貯水池の縁を歩くコースなので平坦と思っていたのが甘かった。ちょっとした地形に沿って登り降りの繰り返しで,湖面のすぐ横を歩く機会はほとんどなし。そのうちようやく2人と1匹に追いつき,道のわかりにくいところを確認しながらShapまで3人と1匹で歩く。ようやく名前を聞くと,Kerry,Ricky,黒犬がFreddieだという。彼女が,自分の好きな日本の小説家の話をして,「名前は忘れたけど『What I talk about when I talk about running』という本がよかった」というので,あぁそれは村上春樹ですね,じゃあ村上春樹の小説や紀行文について語り合いましょう…と言いたいところだが,藪柑子の英語力ではムリ。午後のハイペースがたたって,内側のくるぶしが痛くなってくる。
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 Shapの町に入るとCo-opがある。必要以上に水とかジュースとかレモンとかを買い込んでしまう。レモンは,ミネラルウォーターのボトルに絞って入れるため。500mlのペットボトルにレモン1個分の果汁を加えると,けっこう濃厚なレモン水になる。スムージー1リットルを宿で一気飲み。きょうの宿はShapの町の南のはずれにあるのだが,街道沿いに町を通り抜けるのがものすごく遅く(宿が遠く)感じる。
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 パブの真上で少々うるさい代わりにずいぶん広い部屋をあてがってもらい,タオルバーのスイッチを発見。これで乾かし放題なのが嬉しい。3日続けて洗濯物をたっぷり乾かせる。

(区間距離15miles,所要時間7時間50分)

Coast to Coast Walk (第4日:Grasmere→Patterdale) [ウォーキング]

 昼食のサンドイッチを買おうとGrasmereのco-opに立ち寄ると,「電気系統の故障のため,本日,通常の時刻から営業を開始することができません」と書いてある。ありゃー。とりあえず,隣の雑貨屋で水を買う。きょうは半日行程―もともと標準1日分の行程であるRosthwaite→Grasmere→Patterdaleを2日に分割している―なので,山では行動食だけでつないで,Patterdaleに着いたらビレッジストアで何か買ってお昼ごはんにしよう。

 Grasmereの街並みから街道筋をずっと北へ上がったところ,小流れに沿ってPatterdaleへのBridlewayの標識から登りにかかる。途中で沢を2つに分け,二つ並んだかまぼこ型の尾根の,左側のまん中を登る。「great tongue」「little tongue」とはよく名付けたものだ。尾根の直登なので最初の30分ぐらいがすごくきつい。一本調子の登りでなければ,なんとかなるのだけど。

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 尾根の登りが等高線に沿った巻き道に変わるあたりで後から女性のソロトレッカーが追い付いてきて,あっという間に姿が見えなくなる。すごい速さ。日本の曲がりくねった山道だとあまり感じないことだけど,1キロ先まで見えるようなところで追い抜いたり追い抜かれりすると,その時にはあまりスピードの差がないように見えても,5分もしないうちに姿が見えなくなってしまう。

 どこかに帽子を忘れてきたことに気づく。ホテルに置き忘れたか,途中の店で外してそのままにしたか?どこに忘れたかよくわからないのが情けない。
 コルを越えるとあとは下りるだけだが,下りはじめてすぐに小さな湖がある。ここまで来ると,Patterdale側から登ってきたハイキング客がいっぱい。下りに入ってからL.L.Beanの装備で固めたカップルを追い抜く。このカップルともその後何回か遭遇する(L.L.Beanのウェアや道具をイギリスで見かける機会はあまり多くない)。
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 右岸の道と左岸の道を選ぶ地点で左岸を選んだが,木立の中でゆっくりと高度を下げていくのがややうっとうしい。右岸のほうが遠くまでよく見えてよかったような(隣の芝生は常に青い)。

 4時間半でパターデールのビレッジショップに到着。話に聞いていたとおり面白い店だ。CtoCトレッカーのための伝言板をはじめ,靴ずれ用の絆創膏とかCtoCのワッペンとか絵ハガキとか,店で調理してくれるホットサンドとか,トレッカーの気分をくすぐってくれる。そのかたわらで暖炉用の薪を山盛りで売っているところは,さすがに山国でもある。
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 グラスミアで買えなかったお昼として,サンドイッチとジュースを買って店の前のベンチでむさぼり食う。最近やたらと腹が減る。

 きょうのお宿はOld water view。別棟のコテージに泊めてくださるのだが,メルヘンのようなかわいらしい部屋。小汚いトレッカーをこんなlovelyな部屋に泊めてしまっていいのだろうか。
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時間があるので絵ハガキを何枚か書く。人懐こい猫が遊んでほしそうに近寄ってくる。
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 晩ごはんを食べながらご亭主と話をしていてびっくりしたのだが,亭主のお嬢さん(5歳)は昨年,2度めのCtoCを達成したという。小さいころから(って今でも十分小さいが)お父さんと一緒に近所の山を歩いていたのだけど,あるときCtoCを歩いてみたいと言い出し,お父さんが「それは無理だから」と言っても聞かず,とうとうお父さんと一緒に歩ききってしまったとか。何日ぐらいかかったのだろう…
 しかも立派なことに,来年3度目のCtoCに挑むにあたっては,まだ就学前の子なのにイギリス人得意のスポンサードウオーク,つまり,「もし私がCtoCを歩きおおせたら,村の山岳救助隊だか老人会だったか(忘れた)に寄付してくださる方を募っています」ということで,宿の食堂に奉加帳が置いてある。また10ポンドとか20ポンドとかの金額をかなりの人が記入している。このあたりはさすがなお国柄。

(区間距離8.5miles,所要時間4時間35分)

Coast to Coast Walk (第3日:Rosthwaite→Grasmere) [ウォーキング]

 よく晴れて気持ちのいい朝。
 Rosthwaiteの村はずれから流れに沿った道を遡ってStonethwaiteまで南下し,集落の先から右岸側の尾根に向かって徐々に高度を上げていく。ところどころ急登があるが,比較的歩きやすい登りと急登が交互に現れるようになっていて,こういうトレールの作り方はうまい。振り返るとRosthwaiteの村が遠くに小さく見える。
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途中,初日に出会った2人と1匹に追いつくが,数分いっしょに歩いただけでまたあっさり引き離されてしまう。おそろしく速い。登りはじめて1時間50分で最初の尾根に到達。
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 この尾根(Greenup Edge)を越えると雨樋のようなU字谷が北北東方向に伸びているが,この谷を下ると全然違うところに出てしまうので,この谷を左岸側の上流から右岸側のやや下流へ斜めに横切り,右岸側の尾根のコルに出て,そのコルを越えた先の(向こう側の)谷を下りなければならない。これが難しい。(WainwrightはこれをWythburn trapと名付けている)。

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 コンパスを使って正しい方向を確認するが,左岸側の尾根の上からは,小ピークに隠れて右岸側のコルの位置が見えない。しょうがないので「大体あの辺をめざす」つもりで慎重に下りていくが,U字谷の底は小流れがデタラメに流下している石と泥の世界で,遠くを見ながら歩くなんてとてもできない。深いぬかるみに足をとられるし,頼みの石はすべりやすいしで難渋する。
 あーう!岩場で転倒し,腰を大きな岩にぶつける。痛い。
 頭ぶつけたり足折ったりしなくてよかった。ポールも折れなかった。しかし痛いものは痛い。手足をドタバタさせながらもがくようにして進む。
 今度は幅の広い流れがあって渡れない。うーんと考えていると,向こう岸の大きな岩に腰掛けて2リットルのペットボトル(すごい!)から水を飲んでいる老人(地元のトレッカーと思しき老人)が指をさして「あのあたりで渡れ!」というので半信半疑で流れを遡ると,確かに,水面下に踏み台になりそうな岩がある。慎重に渡ってことなきを得る。

 「横切る」意識が強すぎて道がよくわからなかったが,少し下流へ谷底を歩くと,ようやく,小ピークに隠れていた右岸側のコルが見えてくる。出口発見。慎重にそちらを目指す。さっきのトレッカーがそのコルにいたので「なんとかWythburn Trapにはまらずに済みました…」と声をかけると,にやっと笑ってすごい速さでグラスミア側への谷へ下りていった。みんな速すぎ。1時間以上かけて谷を下りていくと,下の方からグラスミアに滞在している家族連れのハイキング客と思しきパーティがいくつも登ってくる。Rosthwaiteまで歩くつもりだろうか。まさか。

 昼下がりのグラスミアまで下りていくと,これはもうイギリスを代表する大観光地なので,すごい数の人が歩いていて,ちょっと浦島太郎な気分。ただしこの村は,周辺の山々で岩登りをしたりハイキングをしたりする人たちのベースでもあるので,アウトドアショップが何軒もあって,とても助かる。不足しそうなトレッキングソックスを1足買い足すとともに,宿で登山靴を脱いでから近所やパブへ行くための簡単なサンダルとCtoCの細かいガイドブックを購入。
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夜9時をすぎても,空はまだ明るい。
(区間距離8miles,所要時間4時間20分)

(追記)
話を面白くするために大げさに書いていると思われそうだが,CtoCでは実際に最近もこんな事故こんな事故が起こっているので,くれぐれも地図とコンパスを忘れずに。
 

Coast to Coast Walk (第2日:Ennerdale Bridge→Rosthwaite) [ウォーキング]

 夜のあいだ雨が降り続き,朝からまた降りだしそうな天気。洗濯物は結局乾かなかった。

 Stork Hotelのご主人にEnnerdale Bridgeまでワゴン車で送っていただき,同宿の5人で歩き始める。たまたまスタート地点に居合わせたEnnerdaleの村人が,「ゆうべからの雨で,Ennerdale Waterの南岸は歩道に冠水している場所があり,歩けない」というので,北岸に沿って歩く。最初は5人だったのが,2人が「ぼくたちゆっくり行く」と言い出し脱落。そこからはずっと3人で歩く。

 小雨が降り出す。南岸に負けず劣らず北岸もboggyで,おまけに小径の両側のアザミやシダが道をふさぐように生い茂っているので,ひざから下がどんどん濡れて泥まみれになってくる。レインウェア+スパッツでかろうじて防ぐ。一緒に歩いているPeteとSueのご夫婦は,キャンプの道具を一式背負って歩いているというからすごい。全然休憩をとらず,かなりのピッチで歩いて行く。途中だいぶ差がついたが,こちらも少しピッチを上げてしだいに追いつき,3人で話しながら行く。日本ではトレッキングはやらないの?というので,日本の夏は暑くて,とてもトレッキングはできないよ〜と答えると納得した様子。雨が本降りになってきたので,お2人はレインスーツを着て,自分はポンチョをかぶる。

 歩きはじめて3時間5分,雨具に着替える以外一度も休憩なしでBlacksail YHAに到着。ここは本当の山小屋で,雨具を壁のフックにかけてから,やかんを火にかけてセルフサービスの紅茶をいただく。脱落した2人もやってくる。
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 1時間たっぷり休憩の後,PeteとSueに続いてLoftbeckの登りにかかる。ガレ場と小流れを標高差300メートルぐらい一気に登る。かなりの急傾斜である上,石がぐらぐらして歩きにくい。また踏み跡が明瞭でないところへ折からの雨と霧と強風で進路がよくわからない。ポンチョが風にあおられるので裾をたぐりたいが,ポールを両手で使って登っているときには難しい。ぜいぜい言いながらなんとか2人についていくと,Peteが慎重にコンパスを使いながら,自分で思っていたのと90度違う方向へ進んでいく。あれ?と思いながらついていくと,ちゃんと目印通りのstile(フェンスや石垣を人が越えられるように設けられた木製の段段)が現れる。危ない危ない。一人だったらぐるっと西北へ回り込んで,とんでもない方向―Blackbeck ternの方向に行ってしまうところだった。
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 Loftbeckの上,フェンスを越えると100メートルぐらいの間隔でケルンが積まれているのだが,濃霧の中ではありがたい。傾斜がゆるくなったので,歩くのが全然楽。さらに東側の谷に入りこみ,北斜面に移ると,嘘のように雨と霧が晴れる。信じられないほど何キロも先まで見える。すごい風景。

 Honister峠の石切り場に設けられた野茶屋で二人とお茶。「私たちは途中で休みをとらずに歩く流儀なんだけど,午前中も午後も君は後ろにいたから,君もそういう流儀なの?」と聞かれたので,「いゃ,正直いうと,コンパスがうまく使えなくて道に自信がなかったのでついてきたんです。」と白状。続けて「でも,休まず歩き続けるほうが楽だと思っているので,その点は同じです。お二人はけっこう早かったので,ついていくのが大変でしたけど,すごくフィットしていて経験豊かな感じにお見受けしましたが?」とふってみると,案の定Peteはこのルートは2回目,二人ともマラソンランナーだという。そりゃ速いのも道理だ。

 フットパスは東に向かってどんどん高度を下げ,Seatollerの村外れを通っていく。Rosthwaiteの近くまで来てなぜか鎖場。登るための鎖場じゃなく,川のほとりの岩場をへつっていくための鎖なのだが,高度がないので事故の心配はない(足を滑らせても川に落ちるだけ)。もう疲れていて,なんだか面倒な感じ。しかし,やっとたどり着いたRosthwaiteのホテルは,一転してなかなかラブリー。シャワーと洗濯を済ませ,下のパブでカントリースタイルのハンバーガーをビールで流し込んでいると,ものすごい筋肉痛が襲ってくる。階段を這うようにして登り,まだ明るいうちから爆睡。
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(区間距離15miles,所要時間7時間)

Coast to Coast Walk (第1日:St.Bees→Ennerdale Bridge(→Rowrah)) [ウォーキング]

 セントビーズの宿はEllerbeck Manorという農場で,とても快適。そこらじゅうを鶏やあひるが歩き回っている。
 朝食のトーストにはちみつやジャムを塗って炭水化物を山ほどつめこんだあと,CtoCの出発地点まで車で送っていただく。農場から駅前を経由して海岸まで2.5マイル。きのうは駅から歩いて40分ほどかかったが,きょうはあっという間に着く。さすがに車は速い(当たり前)。

 出発点で靴先を海の水に浸し,小石を拾う(←お約束)。歩き出すとすぐ階段。途中で写真を撮るために立ち止まる。その横を若いカップルと黒いレトリーバーが追い抜いていく。このカップルwithレトリーバーとは,結局最終日まで抜きつ抜かれつしながら歩くことになる。

 かなり高い海蝕崖を登り,へりに近いところを歩く。転落する危険があまりないことは理屈ではわかるが,ちょっと怖い。随所にぬかるみもあるが,越えられないほどではない。でも泥よけとしてスパッツをつけておいてよかった。ヤナギランが咲いている。志賀高原みたい。
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 崖の上を4マイルほど歩いてから海岸を離れて内陸へ入り,ルート上最初の村がSandwith。曲がり角にあるベンチでクッキーをかじり,最初の休憩。パブもあるが,まだ立ち寄る気分ではない。農家の石積みの納屋に蔦が這っているのだが,その蔦が早くも紅葉している。
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 その先Cumbrian coast lineの線路をくぐって湿地帯を越えたところでいきなり道に迷う。その後何度も道に迷うが,最初のロストボール。前のパーティーは東へ進むべきところ北へ進んでいくように見える。それ違うんじゃないの?と思うが,うまくコンパスが使えない。迷っているうちに姿が見えなくなってしまう。しばらく考えたがよくわからないので後を追っていくと,やはり彼らのルートでよいのだった。あとで検討してみると,湿地帯で深い泥を避けているうちに,東へ進んでいるつもりでいつのまにか南へ進んでしまっていたらしい。

 Moor Rowの村は日曜日のせいか静まり返っている。村のまん中の駐車場のようなところで,さっきのカップル+レトリーバーがごはんを食べているので挨拶して通り過ぎる。Cleatorの村はずれの橋に腰掛けて,宿で作ってもらったサンドイッチを食べる。その先の農場の横にある細い通路は,人や車やトラクターや家畜が通り過ぎてぐちゃぐちゃになって,かつ油とか化学薬品とか家畜の糞のようなものがたまってすごい色のぬかるみになっている。状態のよさそうなところを選んで通り過ぎようとしたが,ぬちゃっという音とともに,しっかり足首までぬかるみにはまり込む。うげっ。最初の試練。

 農場の東の林道はやがて登山道になり,西側からDentの尾根の中心線に沿って登る。たしかにDent(盾)の名どおりの形をした山で,頂上からはさっき歩いてきた岬やそのむこうのアイリッシュ海がよく見える。降り出した雨はさほどの雨ではないが,風が強い。遠くにはセラフィールド原子力発電所の建物も。ここでさっきのカップルに追いつき,写真をとってもらう。

 西側がほどよい登りだったのに対して東側はかなり急な下り坂で,家族連れが段ボールを尻に敷いて遊んでいるのに遭遇。草があまり生い茂っていないのでどこへでも行けてしまうイギリスと日本の国柄の違いを痛感。でも段ボールごとアザミやハリエニシダの薮に突っ込まないのだろうか。下りきって隣のフィールドへのフェンスを超えるのに,ものすごく高い脚立のようなstileがある。

 谷底のNannycatch まで下りると一転して無風。ガイドブックの類にはとてもきれいな渓谷と書かれているが,風がないと暑いし,なんだか薄気味悪い谷間。再度カップルに追いつかれ,あっという間に抜かれる。

 舗装道に出て間もなくEnnerdale Bridgeで本日の行程14マイル終了。しかしこの村の宿がいっぱいなので,さらにRowrahまで2.5マイル歩かなければならない。上り坂をとぼとぼ歩いていると向こうから来た車が止まる。どうしたのかと思っていると,高齢の男性が「君はCoast to Coast Walkの途中なの?」と尋ねる。どうやら,この道はCtoCのルートから外れてるよ,と教えてくれているらしい。「いや,あの,今日の宿がRowrahなんで。」と説明して「ああ,それならKirklandで左へ曲りなさい。」と納得してもらう。

 Ennerdale Bridgeの宿がいっぱいというだけの理由で何のゆかりもなく投宿したRowrahのホテルだが,トレッカーには大変親切で,四つ辻に建っている宿のおやじさんは,遠くから歩いてくる自分を見つけるとわざわざ1階のパブの前まで出てきて「君がきょう泊る日本人か? Ennerdale Bridgeから電話してくれれば,迎えに行ったのに!」と声をかけて握手してくれる。晩ごはんも宿の1階のパブでしっかりいただき,なかなか充実した1日。
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( 区間距離14+2.5miles,所要時間6時間10分+1時間)

Coast to Coast Walk (準備編③) [ウォーキング]

4.道具の準備

 準備のうち最も大事なものは地図とコンパス,ガイドブックだが,これについては準備編①②のとおりなので省略。
(余談だが,イギリスのこのあたりの磁気偏角は現在2度弱しかない。従って,コピーをとるだけで済む(磁北線を地図に書き込む作業が不要)なのがありがたい)

 それ以外はもともと山歩きに使っていた道具だが,今後歩かれる方のご参考になればと思い一応書いておく。季節や宿泊(B&Bやホテルに泊まるのか,キャンプサイトにテントを張るのか)が違えば道具も全然違ってくるので,あくまでも一例ということで。

 選ぶにあたって意識したことは雨と泥。イギリスの夏は毎日のように雨が降り,かつCtoCのコース上の至る所に「boggy」という表現が出てくる。boggyっていうのは,後でいやというほど難渋するが,まぁ泥沼というか湿原というか,志賀高原の田の原湿原みたいな場所の形容なのだが,そんなところを延々と歩かなければいけないので,雨と泥対策を最優先にする。

 タイミング悪く,10年以上はき慣れたスカルパ社のトレッキングシューズが寿命を迎えてしまったので,仕方なく,メレル社のカメレオン4という防水のミドルカットシューズを購入。
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 前の靴からインソールを移し替えて足慣らしをするが,なにしろ本試験前なので,実地に山で試すこともできず,不安な状態で本番に突入する羽目になった。でもあの泥道を目の当たりにすると,ローカットという選択はあり得なかったと思う。

 トレッキングパンツは,ストレッチ素材の丈夫なものと軽量のもの(これも10年選手)を1本ずつ。後者は予備のつもりだったが,結果的に,前者はコース上で,片方は宿で毎日着ることになった。泥んこ道を1日歩いた後のパンツは泥と汗でぐちゃぐちゃになっているので,毎日洗濯・毎日干し物になる。その間は軽量のほうをはいているということ。

 速乾性のTシャツ2枚。最初は半袖のつもりだったが,今年のイギリスは低温で雨が多いというニュースを聞いて,急きょ長袖に入れ替える。結果的にはこれが大正解。気温の問題よりも,1日中外を歩くので,日焼け防止には長袖のシャツでないとどうにもならない。1日だけなんとなく半袖シャツで歩いたら,顔から腕から真赤になってしまって往生した(後述)。

 トレッキング用の厚手のソックス2足。山の衣類のなかで最も乾きが遅いのはソックスなのだけど,何足も持っていくのは重いので,なんとか2足でがんばるつもりでいた。やはり気温が低いせいもあって思うように乾いてくれないので,万一のため途中のグラスミアで1足買い足したが,結局,乾燥室のある宿とかタオルバーの電熱とかテレビの熱(音声を消して朝までつけっぱなしにして,上の縁にソックスを引っかけておくと熱で乾く)とかで乾かしてなんとか2足で間に合い,3足目は新品のまま日本に戻ってきた。

 ふだんトレッキングポールは使わないのだけど,なにしろ長丁場だし,道具で疲労が軽減するなら使ってみようということで,ブラックダイアモンド社のウルトラディスタンスを購入。やたらと軽い。強度が通常の半分しかないと取説に書いてあるのだけど,使ってみたら全然問題ない。トレッキングポールを使うなら手袋も必要なので,指先が出るタイプの簡単な手袋を購入。

 ゲイター(スパッツ)は,実際に使っている人は3分の1もいなかったが,泥よけとして絶対必要な装備だと思う。スパッツがずれていくのを防ぐためには,できればロングスパッツで,靴底を回して固定できるタイプがいいのではないか。

 レインウエア上下。これまた10年使っているモンベル社のストームクルーザー。
 これに加えて,イギリスの夏によく降るにわか雨(シャワー)対策として,バックパックを背負ったままかぶれるポンチョを購入。
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 トレールラン用のタイツ。普段は六甲全山縦走大会の時しか使わないが,使うか使わないか迷いつつ持参。しかし何日か使ってみると,使った日と使わない日では疲労度合がはっきり違うぐらい有効だった。汗で汚れるので毎日洗うのだけど,編み目がつまっているせいかなかなか乾かないのが難点。

・防水仕様の洗える帽子
途中で紛失してえらい目にあう。

・ヘッドランプ
この時期は21時ごろまで明るいので,ヘッドランプを使うことはまずないと思いつつも,念のため持参。

・行動食
 六甲全山縦走大会で圧縮カステラボールとレモンを愛用していることは以前に書いたのだけど,海外に12日分のカステラを抱えていくのは現実的でないので,どうしようかな~と思っていたところ,友人から「とらや」のようかん(ミニサイズ)をご推奨いただく。実際に歩きながら食べてみると,水気があるので食べやすくおいしいし,カロリーもあり,包装もコンパクトと3拍子揃っていてすばらしい。さらにフィナンシェやフルーツバーのような焼菓子もいただいて,これも大ヒット。SOYJOY出る幕なし。結局,現地でチョコバーとかビスケットを一度も買わずに済んでしまった。
 あとは,近くにパブのない(村から離れたところにある)B&Bに宿泊する際の晩ごはん用にアルファ米の長期保存食を何食分か。

5.宿の手配

 閑散期であれば,その日に行けるところまで行ってから宿を探すという方法がベストだと思う。すごい悪天候なら1日滞留することもできるし。しかし8月はCtoCのピークシーズンなので,主な村の宿屋は早くからいっぱいになる。そこで今回は,あえて全部の宿をあらかじめ手配をする。これはつまり,どうしたってその日のうちにその村までたどり着かなければならないということになるのだけど,まあ仕方がない。
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 ガイドブックや小冊子 "Coast to Coast the original Bed & Breakfast Accommodation Guide"なども参考にしながら,だいたい希望通り取れたのだけど,間の悪いことに,Ennerdale BridgeとBlakey Ridgeの2ヶ所は,それぞれ村から2.5マイルと6マイルも離れた宿しか空いていない。仕方なくそこに予約を入れるが,これでさらに歩く距離が長くなってしまった。特にBlakey Ridgeの宿は,その日ルート上を21マイル歩いた後に宿まで6マイルってそれはさすがに大変すぎるな〜と思いながらそのB&Bのウエブページを見ると,「Blakey Ridgeのパブ《ライオン・イン》から電話をくれれば,車で迎えに行くよ〜」と書かれていたので,ほっとする。

 そんなこんなで,大体の準備を済ませて本試験の準備に忙殺される。で,あっという間に本試験。火曜日にボロキレのように疲れ果てて4日後,土曜日のBAでロンドンに出発。機中でもひたすら爆睡。本当に歩けるのか?

Coast to Coast Walk (準備編②) [ウォーキング]

3.プランニング

 正月明けにガイドブック(準備編①の2冊)と2種類の地図(後述)を取り寄せてざっと読み,どのぐらい大変そうか見積もる。
 前半に山岳地帯(湖水地方)を横切るが,人工登攀などの特別な技術は要らないようなので,結局のところ1日あたり何キロ歩けるかの問題と判断する。日数が多ければお散歩,少なければマラソン大会というわけだ。

 で,セントビーズからRHBまで192マイルあるので,2度(2年)に分けて半分ずつ歩くか1度で歩き切ってしまうかのどちらかになるのだけど,土日休みのサラリーマンの休暇パターンつまり「土曜日に日本を出てイギリスに着き,土曜日にイギリスを出て日曜日に日本に帰ってくる」で考えると,現地に正味6日間しか滞在できない。無理してもう1週間休んだとしても13日間しかない。このうち,帰りの便が現地を出る土曜日当日にRHBからロンドンへ戻ってくるのはリスキーなので,前日の金曜日は移動日に充てるとすると,正味12日間。12日で歩き切れるだろうか。

 本当のところ1日に何キロ歩けるのかよくわからないのが問題なのだけど,六甲全山縦走大会で56キロ歩いたわけだから,安全率を2分の1として,その半分の28キロなら毎日歩けるのではないかと仮定する(根拠なし)。
 で,道中の村ごとの距離を書いた表をつくり、ガイドブックのモデルプランなどを見ながら日程を考えていく。切り詰める余地を探していくと,途中のケルドからリッチモンドまで(22マイル:モデルプラン2日分)を1日で歩けば11日でなんとかなると判断。しかしグラスミアには1泊したいのでここはあえてモデルプラン1日分を2日に分割して,これで合計12日(下に一覧を示す)。予備日や休養日はないし,日本からロンドン経由セントビーズに着いた翌日からすぐ歩きはじめなければならないが,まあしょうがない。

〔Day 0: Tokyo→London→St.Bees〕
Day 1: St. Bees to Ennerdale (14 miles)
Day 2: Ennerdale Bridge to Rosthwaite (15 miles)
Day 3: Rosthwaite to Grasmere (9 miles)
Day 4: Grasmere to Patterdale (8 miles)
Day 5: Patterdale to Shap (15.5 miles)
Day 6: Shap to Kirkby Stephen (21 miles)
Day 7: Kirkby Stephen to Keld (12 miles)
Day 8: Keld to Richmond via Reeth (22 miles)
Day 9: Richmond to Osmotherley (24 miles)
Day 10: Osmotherley to Blakey Ridge (21 miles)
Day 11: Blakey Ridge to Littlebeck (17 miles)
Day 12: Littlebeck to Robin Hood's Bay (12 miles)
〔Day 13: RHB→Scarborough→York→London〕
〔Day 14&15: London→Tokyo〕

 8・9・10日目の3日間続けて20マイル以上歩かなければならないのがきついが,8日目は2つあるルートのうち川沿いの平坦なほうを選べば多少楽だし,9日目はほとんど起伏がないので何とかなるだろう。問題は10日目で,途中までジェットコースターのように昇り降りが続くが,これはもう気力でがんばるしかない。

 地図は,国土地理院の2万5千分の1地図はガイドブックに収められているので買わなくてもいいが,その範囲外のおおまかな地形をつかむために以下の2種類を取り寄せて読み込む。

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Harvey社から出ている地図(2枚組)はポリエチレン製で裏表に印刷されていて,精細度も高く,情報量は多いのだけど,縮尺が4万分の1となんとも中途半端で,距離感がつかみにくい。

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footprint社から出ている地図(こちらも2枚組)は,コースに沿って細長い短冊を並べたようにできていて,短冊ごとに北の方向が違っている。常に進行方向が上なので地図をぐるぐる回す必要がないというのが売りなのだろうけど,こういう妙な地図はだいたいダメな地図と相場が決まっている。実際,かなりアバウトな感じにしかルートが描けていない。おまけに等高線がフィート表示になっている。さらに…縮尺がわからないので地図の隅々まで探してみると,小さく「map scale is approximately 1:50000」と描いてある。approximatelyってあんた…orz

結局,footprint社版はお蔵入りにして,Harvey社版を現地に持っていくことにする。しかし,やはり2万5千分の1のほうが細かい部分がよくわかるので,Aurum社版のガイドブックの地図部分のページをA4版両面でカラーコピーして,1枚ずつZiplocのストックバッグに入れて持ちながら歩くことにする(大判のZiplocはA4よりやや小さいので,コピーの余白を断ち落とすとちょうど収まり,ラミネート加工したのと同じようになる)。Harvey社の地図は予備としてバックパックにしまっておく。

大昔,高校1年生のときにオリエンテーリングの講習でコンパスの使い方を習った記憶があるのだが,まったく内容を覚えていないので,ちょっとだけ復習する。これは後で,スムーズにできなくて苦労する羽目になるのだがその時には知る由もない。

Coast to Coast Walk (準備編①) [ウォーキング]

1.パブリック・フットパスのこと

 イギリスについて詳しいわけでもないのにイギリスの何かを説明するのは気が引けるのだけど,Coast to Coast Walk(以下CtoCという。)について説明しようとすると,その前にパブリック・フットパスについて説明しないとワカランチ会長になってしまうので,簡単に(やや怪しい)おさらいを。イギリス好きの方は飛ばしていただいてかまいません。

 パブリック・フットパスって要するに,「誰でも通行できる小径」なのだけど,日本と事情が違うのは,通行できることが「法律に基づく権利」であり,しかも日本の入会権なんかと違って通行権が特定メンバーに限定されていない(従って私のような外国人も通行できる)点である。また,フットパスのあの小径部分が公有地になっていると誤解している人が多いが,土地自体は公有地だったり私有地(農家の庭とか牧草地とか麦畑)だったりするのだけど,その上に「通行することのできるひと筋の通路部分がある」のだ。

 だから,麦畑のど真ん中をパブリック・フットパスが横切っていたりすると,少なくともその小径の幅の部分は麦が植えられないし,小径から雑草が生えれば(これが見事に生える)繁茂して麦に影響しないようにしないといけないし,機械で刈り取る時にも歩行者を巻き込まないように気をつけながら作業しなければならない。土地全体を覆うように家を建てたりすることもできない。それは,その土地の持ち主にとっては幾分いまいましいことであろうと思われ,事実,フットパス通行者に対する反感を匂わせていると思しき場面(ゲートに骸骨の絵が描かれていたことがあった)も稀にあるのだけど,全体としては当然の権利として世間に認識されている。
 従って,くどいようだが,ここで「パブリック」というのは「オフィシャル」(官製の)でも「プライベート」(個人や私企業の)でもない,真に公共の,という意味なのである。これは他の多くの局面でも現れる,極めてイギリス的な思想だと思う。

 で,この権利は通行することのみを認めているから,当然,パブリックフットパス上で宴会を開いたり野宿をしてはいけない(するとどうなるのか知らないけど)。また自転車や馬で通ることもできない(パブリックフットパスの一類型であるpublic bridleway(後述)では馬の通行も可能)。弁当をつかうのはどうなのだろう…よくわからないが,長時間でなければいいのではないだろうか。少なくとも私は,弁当をつかって文句を言われたことはない。

 また,いわゆるパブリックフットパスは,細分すると3種類からなり,
 ・フットパス(人と犬しか通れない)
 ・ブリドルウェイ(馬とか自転車も通れる。ただし人が優先)
 ・バイウェイ(バイクや四輪車も通れる。ただし人が優先)
の順で大きな通路になる。日常よく見かけるのはフットパスとブリドルウェイである。
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(↑左側がpublic footpath,右側がpublic bridlewayの標識)


2.Coast to Coast Walk (CtoC)のこと

 このようなパブリックフットパスが国じゅうに網の目のように通っているため,また急峻な山地があまりないため,イギリスでは「ほとんどパブリックフットパスだけを通って遠くまで歩いていく」ことが可能である。従って、特段CtoCと銘打たなくても、適当にフットパスを歩いていけば西海岸から東海岸へ、あるいはその逆へ歩いていくことができるわけだ。

 そうしたフットパスの中から、特に景色がよく楽しいルートをつないで(選んで)CtoCという名前をつけ、世の中に広めようとしたのはイギリス政府でも広告代理店でもなく、湖水地方のケンダルという町で教師をしていたアルフレッド・ウェインライトという人物だった。イギリスの他の長距離トレイルには国が認定したものもあるのだけど、純粋に一個人が提唱したトレイルが英国の最も人気ある長距離トレイルとなっていることは特筆されよう。

 もっとも,このトレイルが英国でもっとも歩くのにふさわしい地域を横断していることを考えれば,このことは驚くにはあたらないかもしれない。カンブリア州の海岸にあるSt.Beesの町から,北海に面したRobin Hood's Bayまで192マイル(307キロ)のルートのほとんどは,英国のすてきな国立公園―the Lake District,the Yorkshire Dales,the North York Moors―を通っている。またいくつかの部分では,メインルートの他に別ルートも用意されている。

 ということで若干補足すると,以前から湖水地方の岩山歩きを愛好していたウェインライトがCtoCというルートを提唱したのは1970年ごろとされる。現在も改版されてLincoln社から出版されている「Coast to Coast Walk」の初版がウェストモーランド・ガゼット社から出版されたのは1973年3月で,その細密な手描きの地図や山の風景はすばらしい。日本でこれに匹敵する手描きの地図といったら,冨永省三さんの「スーパーマップ」ぐらいしか思い浮かばない。
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(↑現在Lincoln社から出ている,ウェインライトによるCtoCの案内書。手描きの地図に加えてフォントも手書き風のものが使われるなど,凝ったつくりになっている)

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(↑こちらはAurum社から出ているCtoCの案内書。国土地理院の2万5千分の1地図を使ったオーソドックスな作り)

 1993年に湖水地方をたずねたとき,ウインダミアの本屋にウェインライトの著作が並んでいるのを見て初めてCoast to Coast Walkの存在を知り,それから20年近く「いつかは…」と思ってきたのだけれど,ことしようやく挑戦することができたという次第。


2011六甲全山縦走大会(11/23) [ウォーキング]

何の準備もなく参加した去年は,後半足が止まってしまって大変な思いをした。
これに懲りて今年は,ビルのエレベーターをなるべく使わず階段で上るとか,自宅の周りを1周10〜15キロぐらいで歩くとか,いろいろやってはみたが,まあ気休め。
また,歩行中の糖分欠乏(シャリバテ)の怖さを思い知ったので,事前にカステラボールを用意する。スライスされたカステラ(福砂屋がおすすめ)を買ってきて,一つずつラップにくるんでピンポン玉ぐらいに圧縮する。1切れ179カロリーだそうなので,10個で1790カロリー也。あとはレモン2個をそれぞれ4つに切り,同様にラップに包む。水は現地調達できることがわかったので省略。

週間予報を見ていると,23日だけが曇時々雨になっている。前日になって天気図を見ると,ちょうど大会の最中に気圧の谷が本州中部を横切ることになっている。これは困った。最初から大雨だったら出走しないことは決めてあるのだが,途中から雨だと,リタイアするのも完走するのも大変なのだ。荷物にレインウエアを入れるが,バックパックがとても小さい(7リットルしかない)ので,レインウエアを入れると他に何も入らない。やれやれ。

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前夜の睡眠時間を確保しようと,仕事を終えてからお江戸→伊丹まで飛行機。山歩きというほど大層な山でもないのにそこまでする必要があるのかとも思うが,普段から寝不足なのだから安全のためには仕方がない。といいつつ結局22時すぎまでバタバタしてしまう。

〔須磨浦公園→菊水山チェックポイント(19.5km地点)〕
レインウエアでスタート地点の行列に並んだが,空には星が出ている。しまった。去年より列が長く,後ろのほうになってしまう。去年ほど寒くない。

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5時のスタートとともに,ゆっくり列が前へ進む。チェックを済ませてスタートラインを越えたのは去年と同じ5時15分ぐらい。

長い列になって山を登っていくと,こんな時間でも,毎日上っているとおぼしき地元のお年寄りが下りてくる。まだ真っ暗なのだが。
山頂でゆっくりすることもなく,上っては下りて住宅街の中を歩くことの繰り返し。列(渋滞)のせいでスピードは出ないが,かえって登りがゆっくりになって助かっている部分も。高取山頂からちょっと下りたところにある茶屋のお姉さん(といっても高校生くらい)はことし二人に増え,「元気が出るバナナが1本50円!」という恒例のセリフを唱和している。いいなあ。そのもっと先には崩れかけたような茶屋があって,朝からビールを飲んでいる老人の姿も。

夜が明けて薄日がさす住宅地を歩いていると,地元のおばあさんが手を振ってくれたり話をしたりできるのが楽しい。自分の家の前を2000人からの人が通過していくのはさぞ迷惑であろうと思うが,こうして楽しんでくれている人もいることにほっとする。去年より少し遅れぎみに丸山町のコンビニに到着。ここから菊水山と摩耶山の急登に備えて,レインウエアを外してTシャツ1枚になる。幸い,まだ雨は降っていない。

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鵯越から菊水山の登り,砂防ダムの横で川を渡ってからの登りのきつさは,2年目になっても変わらない。道標によれば1キロぐらいだというのだが,ほぼ全部が階段なので,倍ぐらいに感じる。右側の眼下にはゴルフコースがあって,ゴルファーがなにやらわめいている。。
菊水山頂のチェックポイントには去年より10分遅れぐらいで到達。渋滞のことを考えればまあ上出来。

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〔菊水山→市が原(24.5km地点)〕
さて再び下り。まっすぐ市が原まで下りたいところだが,つり橋で有馬街道をまたいでから鍋蓋山に登り返さなければならない。これがきつい。鍋蓋山頂をすぎると一方的に下り,左側に僧堂のような建物がいくつか見えてきて大龍寺。紅葉の季節なので,バスでやってきた観光客と,出場者のサポート隊がいっぱい。いいなあ。
さらに舗装道を下り,市が原の谷底で川を渡る。麓なのでまだ一面の紅葉には早いが,黄櫨や漆の木は真赤に紅葉している。思わず携帯で一枚。やや遅れぎみなので先を急ぐ。

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〔市が原→摩耶山掬星台チェックポイント(28.7km地点)〕
最大の難関である摩耶山への登りにかかる。息が苦しいのは当然のこととして,足がもたない。去年は途中2回ほど立ち止まったが,今年は100メートル行っては立ち止まり,の連続。そろそろ山頂かな…と思いつつ小ピークに達すると,それは山頂でもなんでもなく,はるか遠くに摩耶山頂の中継アンテナが見えて,それがまた本当に遠く高いところなのでがっくり。行けども行けどもという感じ。こんなに遠かったかな…と自分の記憶の不確かさに舌打ちする。

結局,去年よりやや遅い13時10分ごろに摩耶山頂にたどり着く。雨が降り始めたが,いちばん汗をかく登り区間でレインウエアを使わなくて済んだのは助かった。道中最大の楽しみであるホットレモンの配給をもらいに行く。地元の山岳会のみなさんが作ってくださるのだが,寒い中なのですばらしくおいしい。2杯立て続けにいただき,ペットボトルにも満たしてもらう。幸せな気分。屋根の下でレインウエアを着る。

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〔摩耶山掬星台→記念碑台(33.8km地点)〕
去年ほど天気がよくないので,山上の観光客はまばらで,大会参加者ばかりが目立つ。あずま屋にコンロを置いて,料理したばかりのものをチームのメンバーに配給している団体もある。おいしそう。
出発してすぐに,急な下りと階段登りをやらなければならない。特に階段が辛い。車道に出る手前で,いつも気力が切れて遅れてしまう。それでも去年よりはましな状態で車道に出る。車道の距離はけっこう長いので,山登りに時間がかかってもいいから,車道部分で時間短縮が図れるように足を大事にしようという戦術をとったのがまずは成功。

去年は大阪湾や生駒山まで見えていた稜線上の道路を東へ進むが,今年は霧雨,それも麓から吹き上げてくるような霧雨で視界どころではない。去年と同様,道端の商店であんまんを買って丸かじり。今日はずっと炭水化物を食べ続けている。またそれがいくらでも腹に入るところがおかしい。
六甲山郵便局の甘酒の配給に惹かれるものがあるが,ことしも自制して先へ。六甲山ホテルとか,なかなかいい雰囲気の山岳リゾートな感じで,ここでリタイアしてゆっくり風呂に漬りたいな〜などと思う。汗だくなのに雨と霧に吹かれていると,暑いんだか寒いんだかよくわからないいやな感じ。

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〔記念碑台→一軒茶屋(39.0km地点)〕
遅れをとりもどすべく,かなり快速で六甲山小学校の校門を通過。標高794m,冬は寒いだろうなあ。
カレーの店,ゴルフコースの金網の中をどんどん進むが,霧で視界が悪く,あまり楽しめない。みよし観音から車道を上り,ふたたび階段。もう階段見るのもいやだが,下るよりは上るほうがまだ楽。
雨と霧で家族連れもカップルもまばらな六甲ガーデンテラスをかすめ,さらに歩き続ける。一軒茶屋までに遅れを取り戻したいところだが,やはりそううまくいかない。この道がけっこう長いことに気付く。ときどき霧の向こうからヘッドライトをつけて車が突っ込んでくる(って,車道を歩いているこちらが悪いのだが)。

去年より20分遅れぐらいかな?一軒茶屋でうどんをかきこむ。帽子にヘッドランプを装着し,厚手のソックスに履き替えてこれからの長い下りに備える。さらに靴の紐を締め直そうとしてアクシデント発生。左の靴ひもが切れてしまった。買ってまだ1年しか経っていないが,岩角とかにあたって弱くなっていたのだろう。残りの部分でなんとか締めようとするが,下から3分の2ぐらいまでしか締まらない。これからというときにまずい事態になった。衣類も荷物も,既に汗と雨であらかた濡れてしまっている。

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〔一軒茶屋→東六甲分岐点(40.0km地点)〕
相変わらず霧雨。チェックポイントでもらった最終チェック用の整理番号は1000番と1100番のあいだで,去年とほぼ同じ。通過時刻は16時40分。10分遅れぐらいか…最後塩尾寺からの3キロでタイムをつめるしかない。

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〔東六甲分岐点→大谷乗越(46.0km地点)〕
山上道路から山道への入口には去年と同様「宝塚まであと13キロ」という手書きの看板が出ている。
日没までに少しでも歩いておきたいが,ここまで来ても渋滞があり,やはり船坂峠と分岐点の中間で暗くなる。自分の吐く息が眼鏡を曇らせるのが始末に悪い。

大平山の舗装道路に出たところに,「ゴールまであと8キロ」の看板。それは少なすぎるのでは…あと10キロはあるはず。右側の山道に入って大谷乗越までまた下りが続く。鎖やロープが濡れているので,それでなくても滑りやすい下り坂は気が抜けない。

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〔大谷乗越→塩尾寺(50.0km地点)〕
去年よりも落葉が少ないので,踏み跡は明瞭。それでも,真っ暗な中をヘッドランプだけを頼りに歩いていると,ときどき「?」と感じる場所がある。ボランティアの皆さんがルートのところどころにランタンを吊るして立ってくださっているので,それが見えるとほっとする。塩尾寺まで2キロの地点と1キロの地点にボランティアの方がおられる。最後の下りがつらいことは去年の経験でわかっていたのだが,やはり最後の1キロがつらい。両手も地面につくようにしてゆっくり下りる。去年と同様,唐突に塩尾寺の山門が現れる。19時10分で,去年より15分遅れ。

〔塩尾寺→宝塚(53.0km地点=ゴール)〕
塩尾寺では立ち止まらず,そのままゴールをめざす。去年はこの最後の3キロでまったく足が止まってしまったが,ことしは痛いながらも普通に歩ける。森を抜けると眼下に宝塚の夜景。雨と霧はあがっていて,青白い光がきれいに並んでいる。なんとかタイムを縮めたいが,下り坂が爪先や太ももにこたえることに変わりはない。ここまできてもまだ余力があるのか,走って追い抜いていく人がいるのには驚く。気持だけ早足でゴールをめざす。最後の300メートルぐらい,小川に沿ったゆるやかな下り坂が途方もなく長く感じる。ローソンの角を曲がると最後の階段。去年もこの手すりにつかまって上ったなあと思いながら登り切り,ゴール地点に到達。書類を提出すると,ボランティアの女性が「東京からですか!今から帰れますか?」と心配してくださる。ふとわれに返り,時計を見ると19時34分。去年より約10分短縮した!

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そのままへたりこんでしばらくぼう然とする。ゴールのすぐ横で打ち上げの宴会をやっているグループがいるが,寒くないのだろうか。
大阪の宿でふと,携帯の万歩計画面を見てみると…

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あれ?いやに距離が短いな…1歩あたり70センチで設定しているのだが,これが短すぎるのだろうか(80センチに設定すると,56.5キロになる)。それとも,万歩計のカウントに問題があるのだろうか。それに,消費カロリーが1680kcalしかないなら,カステラボールのカロリーのほうが多いんですけど…

六甲全山縦走大会(11/23) [ウォーキング]

以前「ひょんなことから」に書いた,須磨から宝塚までおよそ56キロにわたる六甲の山稜を,制限時間17時間(スタート5時,ゴール締切22時)で歩いてしまおうというとんでもない大会(六甲全縦2010)。ふとしたはずみで出場することになってしまったのでトレーニングを積まなければと思いながら,他の用事にかまけているうちに,結局何の準備もせず当日に臨むことになってしまった(←無謀。よい子はマネしないでくださいね)。

〔須磨浦公園→横尾山(6.7km地点)〕
前日からの雨は夜半すぎにあがったらしい。海岸沿いの国道2号線でタクシーを降り,スタート地点の行列に並んだのは午前4時。すでに先頭から100mぐらいの列になっている。当然まだ真っ暗で,西の空には月が出ている。ヘッドランプで確認しながら靴の紐を締めなおす。

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スタートのチェックを1人ずつ済ませるので,スタートラインを越えたのは5時15分ぐらい。

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一列になって山を登っていく。まだ体が温まっていないので最初はかなりぎくしゃくする。旗振山の頂上からは神戸の夜景がきれいに見える。
一度登った山を下り,まだ薄暗い高倉台団地の中を通り過ぎて(この時間でも,散歩している人がいる!)歩道橋で大通りを渡ると,また一列になって登る。このあたりでようやく明るくなり,ヘッドランプを外す。
横尾山まで行くと,朝日を浴びて美しく輝く神戸の街と大阪湾の大パノラマ。

〔横尾山→高取山(12.2km地点)〕
横尾山を過ぎるといきなり痩せ尾根(須磨アルプス)。当然のように渋滞するが,渋滞の先頭にはたいてい,高齢の女性がいる。うまくやりすごしてくれればいいのに。
せっかく登った山をまた下りて,横尾の住宅地を妙法寺の方角へ歩く。住宅地を歩きながらパワージェルの最初の1本を食べるが,おそろしくまずい。水で流し込む。
阪神高速と地下鉄の下をくぐり,妙法寺小学校の横の小道から住宅街を上って,ふたたび高取山の登りにとりつく。体が温まってきているのでほとんど疲れを感じない。

〔高取山→鵯越駅(16.2km地点)〕
頂上には立派な神社があり,鳥居が並んでいる。すぐ下の茶屋でバナナを1本50円で売っている。「元気が出るバナナが1本50円!」というお姉さんのセールストークが秀逸で,あれならかなり売れそう。その横で最初の休憩。パワージェル2本とレモンをかじる。
高取山を下りて(せっかく登ったのに,また下りることの繰り返し。げんなりする),あまり統一感のない住宅地の中を右へ左へめまぐるしく曲がっていく。途中の大通りに「神戸駅行き」のバスが走ってくるのを見て,ふと現実に引き戻されたような気がする。とある一軒の建物に絡んだ蔦が,みごとな蔦紅葉になっている。
コース中唯一のコンビニ「ヤマザキデイリーストア」の前に座り込み,2度目の休憩。パワーバー2本とレモン,1つ残しておいたおにぎりを食べる。まだ8時半。

〔鵯越駅→菊水山チェックポイント(19.5km地点)〕
駅をすぎると,小川に沿って森の中の平坦な道が続き,心なごむひととき。鈴蘭台処理場の紅葉がきれいだが,それを楽しむ余裕はない。その先で線路をくぐり,「菊水山まで3キロ」の看板を見てから本格的な登り。かなり遠くの頂上に,銀色の大きなアンテナが何本も建っているのが見える。右手には「菊水山隧道」と書かれた電車のトンネルと公園のような場所が見える。ほぼずっと階段を登っていく。足にこたえる。足に手を沿えて登るような形になってくる。ほとんど休憩なしで登っているのでたちまち汗だくになる。しまいには汗で眼鏡が曇ってくる始末。
ようやくチェックポイントにたどりつき,3度目の休憩。パワージェル1本とレモン。午前10時すぎ,登りはじめて5時間。
頂上は吹きさらしだが,かまわずフリースをしまいこみ,Tシャツ1枚になる。

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〔菊水山→市が原(24.5km地点)〕
さてTシャツ1枚になって再び下り。200m以上下る。谷底まで下りるのかと思いきや,有馬街道をまたいで中腹につり橋がかかっている。これはありがたい。これがなければ往復で高低差50メートルぐらいは余分に歩かなければならなかっただろう。とはいえもう一度200m登り返して隣のピークへ。息が切れ始める。頂上で思わず「ここはどこ?」と独語していると,後から「鍋蓋山だよ~」と年配の参加者が教えてくれる。
またまた下り,大きなお寺の山門を通過する。ここを補給ポイントに使う団体が多いらしく,あちこちにビニールシートを広げてお弁当や飲み物を用意している。これがあれば食糧や飲料水を大量に背負う必要はないわけで,なかには「日本旅行 全山縦走」なんていう看板も見える。旅行代理店に募られて六甲全縦に参加するのはやめてほしいなあ。
さらに山道を下り,市が原の谷底で川を渡る。砂岩質の白っぽい河原にお昼の日差しがあたってきれい。家族連れがバーベキューをしている平和な風景が広がっているが,立ち止まる余裕はない。

〔市が原→摩耶山掬星台チェックポイント(28.7km地点)〕
川を渡って摩耶山への登りにかかり,布引ハーブ園への分岐や「ひよこ登山会」と書かれた小屋の横を通ると,急な登りの連続になる。ぜんそくの発作のように,息を吐くたびに声が出てしまう。理由は不明だが,黙って息を吐くより声を出すほうが楽なのだ。上り坂の途中でたまらず4回目の小休止。パワージェル1本とレモン。レモンは皮ごと食べてしまう。岩だらけの登り道で,両手も使わなければならない(というより,なるべく両手を使ってはいつくばるように登ったほうが楽)。
13時すこし前にやっとの思いで摩耶山頂にたどり着き,チェックポイントの手前のテレビ送信所の蔭で風をよけながら5回目の休憩。登りはじめて8時間。パワージェル1本とレモン。風が強くなってきたのでフリースを着込む。
掬星台のチェックポイント。500mlのみかん水が1本あいたのでポカリを買い込む。地元の山岳会がホットレモンの配給をしてくださる。たとえようもなくうまい。飲んだ瞬間に全身にしみわたる感じ。

〔摩耶山掬星台→記念碑台(33.8km地点)〕
山上は家族連れやカップルでいっぱい。掬星台のすぐ下には「オテル・ド・摩耶」という名のこじゃれた建物がある。その玄関先ではなぜかモンベルが屋台を出していて,ヘッドランプやソックスやフリースを売っている。ここでソックスを買って履き替えようかとも思うが,古いソックスの捨て場もないので見送ることにして,先へ進む。
舗装道路と山道が交互に現れるが,山道の登りが辛い。特に階段が辛い。車道に出る手前の階段で,明らかに全体平均より遅くなりはじめる。途中で何度か立ち止まり,後からくる参加者に先を譲る。
山上の道路沿いにはおしゃれなカフェやそうでもない喫茶店などが並んでいるが,入ってお茶をしようという気にはならない。座り込んだら最後,バスに乗って帰りたくなるに決まっているので。

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六甲山郵便局の手前に商店があり,肉まん・あんまん・菓子パン・おにぎり・みかんなどを売っている。迷わずあんまんを1つ。ふだんなら必ず肉まんを選ぶところだが,今の自分には炭水化物以外必要ない。店の外に置かれたビールケースに腰掛けてかぶりつく。甘くてうんざりするかと思いきや,まったく甘さを感じない。すばらしい。30キロ以上も山道を歩いてくれば,おいしいのも当然なのかもしれない。6回目の休憩。
六甲山郵便局で甘酒の配給をしているが,自制して先へ。六甲山ホテルとか,山上のリゾート地そのもので,なんだか場違いな所を歩いている感じ。

〔記念碑台→一軒茶屋(39.0km地点)〕
交差点の先で小道に入る。六甲山小学校の校門の脇に石碑があり,「標高794m」と書いてあるのを見てふと思う。宝塚の標高が何メートルなのかわからないが,これだけの高さから下りていくのは相当に大変であるに違いない。カレーの店の前を通るが,たんぱく質や脂肪には全く惹かれない。やがて道はゴルフコースの中に入っていく。金網で回りを囲まれた中を歩いていると,鳥かごの中を歩いているような気分。
一度車道に出て再び山道。登りの階段にかかると,がっくりペースが落ちる。やがて六甲ガーデンテラスの脇に出ると,そこにはショッピングモールもどきがあって人がいっぱい。バス停の行列を見て,ふと「バスで三ノ宮まで出れば,ゆっくりお茶して新幹線で帰れるよなあ…」と思う。実際に市街へのバスがあるのか知らないが。

頭の片方では
「バスに乗れば三ノ宮のカフェでお茶して,家でゆっくり晩飯食えるでしょ」とか
「こんなことやってないで,早く家に帰って修論書かなきゃ締切に間に合わないよ」
とか考えるのだけれど,もう片方では,
「こんなとこで白旗あげてどうすんだよ!落伍者!敗残兵!」とか
「何十万キロかなたから満身創痍で帰ってきた「はやぶさ」の苦労を考えろよ!それに比べりゃ56キロぐらい屁みたいなもんだろ!」
とか考えたりもする(←バカ)。

ガーデンテラスのソフトクリームの立体看板の横で左足の靴紐をゆるめる(本来なら締め直すところだが,痛くてそれどころではない)。ジンギスカンの店があっていいにおいも漂っているが,空腹感はない…というか,自分が空腹なのかもよくわからなくなっている。
ガーデンテラス周辺を過ぎると急に人影がまばらになり,あたりは参加者だけになる。足取りの軽い参加者が次々に追い抜いていく。右手にはすばらしい景色が広がっているが,それを楽しむ余裕はない。

午後の陽が傾きはじめたころ,一軒茶屋でうどんをかきこむ。7回目の休憩。気温が下がっているので温かいうどんがおいしい。体を暖め,帽子にヘッドランプを装着して夜に備える。

〔一軒茶屋→東六甲分岐点(40.0km地点)〕
東六甲分岐は最後のエスケープ地点なので,リタイアか続行かを決めなければならない。分岐点の手前のトンネルを歩きながら考えるが,“相当時間はかかるだろうが何とか完歩できそう”と判断する。チェックポイントで,参加カードに最終チェック用の整理番号をホチキス止めしてくれる。たしか1061番であったか。これは通過順位なのだろうか?出場者が2000人だから,すでに半分より遅くなっているのであろうか。なおも迷ったのでボランティアの方に「宝塚まで何時間ぐらいかかりますかね?」と尋ねる。「まあ3時間ぐらいですかね」とのこと。いま16時半だから,リミットの22時までにはまあ何とかなるだろう。

〔東六甲分岐点→大谷乗越(46.0km地点)〕
山上道路から山道への入口に「宝塚まであと13キロ」という手書きの看板が出ている。さきほど一軒茶屋で地図をチェックしたときにこの区間を「1・2・3・4・3」に分けて覚えた。チェックポイントから分岐点まで1キロ+分岐点から船坂峠まで2キロ+船坂峠から大谷乗越まで3キロ+大谷乗越から塩尾寺まで4キロ+最後にゴールまで3キロ=計13キロという順序(※実際とは違う=間違って覚えていた)。「あと○キロ,あと○キロ」と念じながらあるく。

うどんが体内で燃焼しているのか,意外と快調に船坂峠への登りを飛ばす。あまりアップダウンのない尾根道なので,暗くなる前に少しでも距離を稼いでおきたい。東京の日没が17時として,大阪なら17時半ぐらいまで明るいかと期待しながら歩くが,船坂峠のあたりで暗くなる。気温が低いため,自分の吐く白い息がヘッドランプにあたっている。
大平山の舗装道路に出たところで8回目の休憩。大谷乗越までまた下りが続く。ゆるめた左足に代わって,右足の甲が靴の中で腫れ上がっているのがわかる。下り坂の右手に,きれいな夜景が現れる。

〔大谷乗越→塩尾寺(50.0km地点)〕
車道を越えたところに座り込んで9回目の休憩。休憩の頻度がどんどん短くなる。これから下りが続くとわかっているのだが,痛くてたまらない右足の紐も緩める。
わりと平坦な山道を登る。踏み跡は明瞭だが,真っ暗な中をヘッドランプだけを頼りに歩いていると,「こっちでいいのかな?」と迷う。ヘッドランプを白熱球からLEDに買い替えておいたことに感謝する。明るさが段違い。追い抜いてもらうと,しばらくはその後をついていけるが,やがて背中が遠ざかって何も見えなくなる。ボランティアの皆さんがルートのところどころにランタンを吊るして立ってくださっているので,それが見えるとほっとする。やがて行く手に,つまり東の方角にほぼ満月が現れる。気温が低く,風が強いせいか輪郭が非常に明瞭で,ちょうど自分の進む方向に,林の間から見え隠れするのが幻想的。
ボランティアの方に塩尾寺まであと1キロと言われてからが長い。すでに足が疲れきっているので,下りの衝撃を吸収できない。手を副えるようにしてゆっくり下りる。最後は下り階段の途中に,唐突に塩尾寺の山門が現れる。18時55分。

〔塩尾寺→宝塚(53.0km地点=ゴール)〕
山門の前に座り込んで最後の休憩。カロリーメイトとチョコレートをポカリで流し込む。その間に体が冷えてしまったようで,立ち上がると足の痛みが倍加している。ここからゴールまでは舗装道路を下るが,爪先や甲が痛くて歩幅が極端に小さくなる。時速2キロぐらいであろうか。どんどん抜かれていくが,逆に,同じような苦痛にあえいでいる人を抜いたりもする。なかには後ろ向きにゆっくり歩いている人もいる。たぶんそのほうが体の負担が小さいのであろう。

塩尾寺ではまだ一面のパノラマだった宝塚市街の明かりに向けて,つづら折りの舗装道路で高度を落としていく。やがて「甲子園大学」と書かれた大きな建物が見え,ようやく人家が現れる。ずいぶん高いところだが,ともかく住宅街の中の道をずっと下りていく。水路に沿って標高を下げていくが,ゴールがひどく遠く感じる。たまに紫色の明るい建物があって,あれがゴールか?と思うとクリスマスのイルミネーションだったり。
やっと大通りに出てゴール地点の公園にたどり着くが,入口の階段が登れない。手すりを腕でつかみ,腕のちからで体を引っ張り上げてようやくゴールへ。賞状と記念品をいただいて,そのまま地面に倒れこむ。時計を見ると19時44分。ということは,タイムは…14時間29分。

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ゴールしたとたん緊張の糸が切れてしまい,筋肉痛が倍加する。宝塚駅までのわずか300mがとんでもなく遠い。青信号のあいだに横断歩道が渡りきれるか,本当に心配になる。宝塚の駅前で地元のみなさんが「足湯」をふるまっているが,いま足をお湯に浸してしまったら,そのまま動けなくなってしまいそうなので自制し,電車で家路につく。
帰宅してから荷物を片付け,駅前でお嬢さんが配付していた紙片をふと開いてみたら,完走者への手書きのメッセージカードだった。すばらしい。「ホットな宝塚市民の会」のみなさま,本当にありがとうございます。

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